アールワン日誌 Blog

ある日突然、従業員の給与を差し押さえる「債権差押通知」が会社に届いたら。

2015/08/10

ある日突然、従業員の給与を差し押さえる「債権差押通知」が会社に届いたら。 - 社会保険労務士法人アールワン | 東京都千代田区

こんにちは。社会保険労務士法人アールワンの濵中(はまなか)です。最近、蒸し暑い日が続き、毎晩の寝苦しさに悩んでいます・・・。

今回のトピックは「債権差押通知書」です。これは、裁判所や都(市)税事務所または市区町村などから、会社に宛てて「従業員の給与を差し押さえるため」に送られてくるものです。

さて、もしもそのようなものが突然会社に届いた場合、いったいどのような判断をすべきでしょうか。本来は従業員に支払うべき給与を、完全にストップしなければいけないのでしょうか?

 

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「債権差押通知」により会社も「債務者」に

そもそも「債権差押通知」が発生する背景は次のとおりです。

対象となる従業員が《個人的理由により金融業者等からの貸付金の返済が滞っており、金融業者等が裁判所へ申し出を行った》あるいは《就職される以前に納めるべきであった住民税や税金の遅滞金がある》などといったケースにおいて、会社宛に給与の一部を差し押えるように通知が送られてきます。

これらの通知を受け取ると、会社は「第三債務者」(債務者に債務を負うもの)となります。この場合、従業員の給与の一部を差し押さえ、債権者へ支払う「義務」が生まれるのです。

特に裁判所からの差し押さえ効力は高く、債権者(金融業者等)は支払いに応じなかった会社に対して取立訴訟手続きが可能とされています。

 

差し押さえが可能な金額は?

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ただし、差し押さえるべき内容により、差し押さえが可能な金額は異なってきます。

 

*裁判所からの通知の場合

民事執行法により、手取り額の「4分の3に相当する部分」は差し押さえが『禁止』されています

ただし、その額が「政令で定める額」(※)を超えるときは、政令で定める金額までが差し押さえ禁止。 ※2015年8月現在「33万円」です。

 

*都(市)税事務所または市区町村からの通知の場合

国税徴収法や地方税法により差し押さえ可能額を算出。

従業員の「扶養家族数」や差し押さえるべき給与から控除される「社会保険料や所得税、住民税、生活保障費」などの金額により、差し押さえ可能額が変動します。

 

差し押さえは毎月の給与および賞与から行うことが可能となっています。また、非課税扱いの通勤手当は差し押さえの対象外となっています。

ここで、差し押さえ可能金額を実際に計算してみましょう。

 

対象となる従業員の給与が以下の場合

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《裁判所の場合》

支給合計-(通勤手当+社会保険料+所得税+住民税)の4分の1を『差し押さえ金額』として算出

(¥318,930-(¥8,930+¥41,698+¥7,180+¥24,400))× 1/4  =  ¥59,180(円未満切捨)

 

すなわちこの場合は、本来の支給額「245,652円」から「59,180円」を差し引いた、「186,472円」が実際の支給額となります。

 

滞納額を回収するまで、会社が毎月差し押さえに対応

差し押さえた給与分は、従業員に代わって会社が債権者へ支払うこととなります。

「債権差押通知」には、滞納の総額のみが記載されており、毎月の差し押さえ金額は指定されていません。滞納額の全てを回収して差し押さえが解消されるまで、会社が毎月給与からの差し押さえ可能額を算出し、従業員の給与や賞与から継続して差し押さえを行う必要があるのです。

※ちなみに債権差し押さえは、労働基準法24条の賃金直接払いの原則には抵触しないものとされていますので、「賃金控除の協定」は必要ありません。

 

また、「差し押さえが競合する(重なる)」というケースがあります。

具体的には、以下のような場合に会社は給与を法務局へ供託します(債権者への分配は国に委ねるということです)。

・複数の債権者が同時に差し押さえを行っている

・債権の一部が重複し各差し押さえ額の合計が、その月から差し押さえられる額を超えている

供託を行った場合、裁判所へ「事情届」に供託書を添付し提出する必要があります。

 

さて、ここまでは会社に求められる一般的な対応となりますが、差し押さえが継続すれば従業員にとっては毎月の手取り額が減ることになります。人によっては日常生活に支障が出る可能性もあるでしょう。そこで「返済が厳しい」ということであれば、債権者へ申し出ることにより、《差し押さえ金額を毎月一定金額に変更できる》という場合もあります。

会社も第三債務者となっている以上は、従業員と一緒に債権者へ返済をする義務が発生しています。つまり大切なことは、会社が「従業員の個人的な問題」と考えずに、サポートしながら一緒に解決していく姿勢だと言えるでしょう。

まとめ
今回のトピックについて、会社が取り組むべきこと

毎月の差し押さえ金額の正しい計算
差し押さえ額変更も含めた従業員サポート

 

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濵中 伸介(はまなかしんすけ)のイメージ

執筆者

社会保険労務士法人アールワン 濵中 伸介(はまなかしんすけ)
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