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1日8時間勤務でも残業代?フレックスタイム制の勤怠管理の3つのポイント。

2017/06/20

1日8時間勤務でも残業代?フレックスタイム制の勤怠管理の3つのポイント。 - 社会保険労務士法人アールワン | 東京都千代田区

こんにちは。東京都の社会保険労務士法人アールワンの濵中(はまなか)です。

政府が今年の3月に、長時間労働の是正や生産性向上を目的とした「働き方改革実行計画」をまとめましたが、そのなかで、柔軟でメリハリのある働き方を実現する手段として「フレックスタイム制」も見直しがされています。特に、これからの労働力人口の減少を背景に、子育てや介護などさまざまな事情を抱える働き手を活用していく手段として、フレックスタイム制は今後ますます注目されていくでしょう。

ただし、会社がフレックスタイム制を新たに導入すると、これまでの勤怠管理とは異なる概念がいくつか出てくるため、その違いに当初は戸惑うこともあるはずです。そこで今回はフレックスタイム制の勤怠管理において、特に注意するべき3つのポイントをお伝えします。

 

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「フレックスタイム制」とは?

フレックスタイム制とは、簡単にいうと始業と終業時刻を労働者の決定にゆだねる制度です。会社が1日の中で勤務が義務づけられている時間帯(コアタイム)を設定することもできますが、原則として労働者は自由に出社、退社ができるようになります。通勤ラッシュの時間帯を避けて出社したり、子育てのために早退が多い人が、そのぶん別の日に多く働く、といったようなライフスタイルに合わせた勤務ができる点が魅力です。

また、フレックスタイム制では1日単位での労働時間の長さは定めず、1ヶ月以内の期間(精算期間)で働かなければならない総労働時間を決めます。最終的にその精算期間内で実際に働いた労働時間の過不足によって、割増賃金や不足労働時間の控除を計算するため「遅くまで働いたぶん、他の日に早く帰る」といった調整をすれば残業代の削減効果も期待できます。

そのため、1日単位での繁忙の差が大きい仕事や、個人で完結できる業務、技術的な業務が中心となっている職種はフレックスタイム制の導入に適しているといえます。
例)企画職、ITエンジニア職、デザイン職etc

逆に、相手先との連絡が多い仕事や、社内で複数の人間と連携する必要のある職種については、「特定の人がいないことで、他の人の仕事が進まなくなる」といった弊害が起こる可能性があるため、導入については慎重に考える必要があるでしょう。
例)営業職、販売職、受付職etc

 

フレックスタイム制の勤怠管理における3つのポイント

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それでは、フレックスタイム制と従来の勤怠管理とで大きく異なる3つのポイントを見ていきましょう。

 

遅刻・早退控除

フレックスタイム制では、始業と終業の時刻を労働者の決定にゆだねます。そのため「遅刻・早退」という概念がありません。また、必ず勤務しなければならない時間帯として「コアタイム」を設定することもできますが、たとえコアタイムに勤務しなかった時間があっても、清算期間での総労働時間に不足がなければ、そのぶんの遅刻・早退の控除をすることもできません。

そのため、どうしても労働時間の管理が甘くなってしまいがちです。そこで、コアタイムの遅刻・早退を抑止するために、会社はたとえば次のような対策をしておくとよいでしょう。

◇「精勤手当」を作って、コアタイムの遅刻・早退があった場合は不支給とする。
◇コアタイムの遅刻・早退を、賞与や人事評価のマイナス評価に反映する。

 

割増計算の対象となる労働時間

フレックスタイム制では、1ヶ月以内を精算期間として定め、その精算期間を平均した1週間の所定労働時間が40時間(※)以内でなければなりません。1ヶ月を精算期間とした場合、次の表の法定労働時間(もしくは「その範囲内で労使協定において定めた時間」)を超えた労働時間が、割増計算の対象(時間外手当)となります。

※「特例措置対象事業場」の場合は週44時間。特例措置対象事業場とは、常時 10 人未満の労働者を使用する商業、映画・演劇業(映画の製作の事業を除く。)、保健衛生業、接客娯楽業のことです。

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しかし、ここで一般の勤怠管理と大きく異なる点があります。たとえば、暦の日数が「30日」の月に所定の労働日数が22日あるとします。その場合、週休2日制で1日平均8時間の労働(月176時間)をしただけでも、法定労働時間(月171.4時間)を超えてしまい、割増賃金が発生することになるため、給与計算時には注意が必要です。

※ただし、いくつかの要件を満たした場合、法定労働時間の上限を超えた場合も、割増計算の対象としなくても差し支えないものとされています。

 

有給休暇の取り扱い

フレックスタイム制において有給休暇を取得した場合には、労使協定で定めた「標準となる1日の労働時間」を労働したものとして取り扱われますが、そこで注意が必要なのが「半日単位での有給取得」を認めている場合の給与計算です。

たとえば「標準となる1日の労働時間」を「7時間45分」で設定しているとすると、半日の有給休暇を取得した場合には、労働したものとして取り扱われる時間が「3時間52分30秒」となります。そこで、給与計算をするときには分単位で切り上げを行なう必要がありますので<すべて半日単位で有給休暇を消化した人>と<すべて1日単位で有給休暇を消化した人>との間では労働したものとみなされる時間数が異なるという不都合が生じることになるのです。(これを避けるためには、「半日単位での有給取得を認めない」あるいは「1日の労働時間を8時間など、きりのよい時間で設定する」といったことが必要です)

また、有給休暇の取得によって発生した労働時間によって、結果的に法定労働時間を超過したとしても、それは割増計算の対象にはなりません。ただし、それを管理するためには「実際の労働時間」と「有給分の労働時間」を区別する必要があるため、そのための事務作業も新たな負担として発生します。

 

今回の記事では、勤怠管理の3つのポイントにしぼってお伝えしましたが、もちろんフレックスタイム制にはその他にもいくつか特徴があります。たとえば「コアタイムは10時からだけど、週1回の全体会議があるので月曜日だけは9時に出社してほしい」といった場合には、「月曜のみコアタイムを9時にする」という旨を労使協定に定めることも可能です。

導入後のトラブルを避けることはもちろん、その特徴を最大限活かして生産性の向上や人材定着につなげるためにも、導入にあたっては事前の情報収集を念入りに実施することをお奨めします。

 

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濵中 伸介(はまなかしんすけ)のイメージ

執筆者

社会保険労務士法人アールワン 濵中 伸介(はまなかしんすけ)
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