社員の在宅勤務に必要な雇用契約と、おさえておくべきポイント。
2015/10/10
こんにちは。社会保険労務士法人アールワンの濵中(はまなか)です。最近友人の結婚式に参加してきました。幸せそうな新郎新婦の姿を見て、結婚して10年以上が経つ私も、改めて「妻を大切にしなければ」と感じました・・・。
さて、あなたの会社では「在宅勤務」の導入をお考えでしょうか?
経済・社会環境の変化により、今後はこれまでにないほど働き方が多様化するとも言われています。特に人手不足で採用競争が激しい環境では、柔軟な勤務形態に対応することで、人材の確保や定着につながることも期待できるでしょう。
ただし、勤務形態が多様化しても、その多くは一般社員と同様に現行の労働基準法令の範囲で運用されなければいけません。また、それぞれの勤務形態にあわせて、(現行のものとは異なる)雇用契約書や就業規則を新たに用意する必要があります。
そこで今回は「在宅勤務」を例に、どのような点に注意して雇用契約書や就業規則を準備すべきかをお伝えします。
在宅勤務も「労働基準法」が適用されます。
まず、前提として会社の従業員が在宅勤務を行う場合においても、
「労働基準法」「最低賃金法」「労働安全衛生法」「労働者災害補償保険法」
といった労働基準関係の法令が適用されます。
すなわち、通常の社内勤務の従業員と同様に、勤務時間や賃金などの諸条件について、雇用契約書や就業規則において明確に定義する必要があります。
どのような雇用契約が必要か?
では、新たに在宅勤務をスタートする従業員と、どのような雇用契約を締結する必要があるのでしょうか?
就業の場所について
就業の場所として、「従業員の自宅」を明示する必要があります。社外であればどこでも自由に就業できる、わけではないことに注意してください。もしもこれを明示せずに、従業員が自宅外の場所で業務をすれば、情報漏えいなどのさまざまなリスクが高まる恐れがあります。
労働時間について
在宅勤務は、「勤務時間」と「日常生活(プライベート)時間」が混在せざるを得ない働き方であり、「労働時間の算定が難しい」とみなされています。そのため、次の場合には(事業場外労働の)「みなし労働時間制」を適用することができます。
▽以下の「すべて」に該当する場合▽
・業務が、私生活を営む自宅で行われている。
・情報通信機器が、使用者(上司等)の指示により常時通信可能な状態におくこと、とされていないこと。
(例えば「会社から携帯電話を貸与され、会社からの連絡にいつでも出なければならないような状況」ではない、ということです)
・業務が、使用者(上司等)からの随時の具体的な指示に基づいて行われていない。
上のすべてにあてはまらない場合には、みなし労働時間制を適用することはできません。
みなし労働時間制を適用する場合の注意点
みなし労働時間制を適用すれば、常に「就業規則等で定められた所定労働時間を勤務した」とみなされることになりますが、労働時間の概念がまったく無くなるわけではありません。具体的に、次の点に注意が必要です。
・もしも、所定労働時間と異なる労働時間を設定する場合には、新たに労使協定を締結する必要があります。
・労使協定で定めた時間が法定労働時間を超える場合には、その労使協定を労働基準監督署長へ届け出る必要があります。
・在宅勤務であっても、「休憩」や「深夜労働に対する割増賃金」の概念は適用されます。そのため、在宅勤務の従業員であっても、その労働時間の状況を会社は適切に把握する必要があります。業務に従事した時間を日報等で報告してもらうことで、必要に応じて業務の内容や量を調整していくことが望ましいです。
年1回の健康診断は必須です。
以前にこちらの記事でもお伝えしたように、会社は従業員に年1回の健康診断を受けさせる義務があります。
これは、在宅勤務を行う従業員においても必須となりますので注意が必要です。
もしも自宅で怪我や災害が発生したら。
たとえば、業務が原因である災害については、業務上の災害として「労働者災害補償保険」(いわゆる労災)の給付の対象となります。つまり、自宅におけるプライベートな行為が原因である場合には労災の対象になりません。
ただし、状況によってはそれらの切り分けが難しいこともあるでしょう。その場合は、個々の事案ごとに、業務や通勤に起因して発生したものかどうかについて調査を行われた上で、労災の給付対象となるかどうかが判断されることとなります。
以上、今回は従業員が新たに在宅勤務をスタートするために必要な準備や注意点をチェックしました。
育児や介護のために在宅勤務を希望する人は今後も多くなることが予測されますし、会社にとっても人材の確保やコスト削減などのメリットがあるでしょう。しかし、正しく運用されなければ、不必要な時間まで労働時間としてカウントしなければならなくなる、などのリスクも発生します。
この制度が従業員、会社のお互いのためになるように、まずは正しい知識を身につけておくことが必要です。
まとめ
今回のトピックについて、会社が取り組むべきこと
雇用契約書や就業規則での労働条件の明示
みなし労働時間制の場合の労働時間の管理
年1回の健康診断も忘れずに
社会保険労務士法人アールワン 濵中 伸介(はまなかしんすけ)
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