「マタハラ」防止も企業の義務に?でも、育休取得に本当に大切なことは・・・。
2016/02/29
こんにちは、東京都千代田区の社会保険労務士法人アールワンの高澤(たかさわ)です。
さて、世間では今、男性の育児休業取得に何かと関心が集まっていますね。しかし男女問わず、育児休業の取得には、まだまだ課題があるということは以前のこちらの記事でもお伝えしたとおりです。
(2015/08/30)お金のことだけではない、育児休業を利用する時の悩みとは。
今回のトピックは、その課題のひとつである「マタニティハラスメント」についてです。
マタニティハラスメントとは?
さて、そもそも「マタニティハラスメント」とは具体的にどういったことを指すのでしょうか?
厚生労働省によれば、
妊娠・出産・育児休業の取得などを理由とする、解雇・雇い止め、降格などの不利益な取扱い
を「マタニティハラスメント」と定義し、「違法」としています。
2015年に初めて実施された調査によると、実際に「マタニティハラスメントにあったことがある」女性の就労形態別の割合は、次の通りでした。
◇派遣労働者のうち → 48.7%
◇正社員のうち → 21.8%
◇契約社員のうち → 13.3%
◇パートタイム労働者のうち → 5.8%
(対象者:25~44歳で就業経験がある女性、約3500人から回答)
また、NPO法人「マタハラNet」にもさまざまな事例が寄せられています。
「妊娠したことを報告した2週間後に、『勤務態度が悪い』という理由で解雇通知を受けた」
「育児休業取得を申し出たところ、『業務が忙しい時期なのに迷惑だ』と言われた」
「同僚に『産休育休で仕事を休んでもお給料がもらえていいよね』と言われた」
「復職しようとしたところ、保育園の送り迎えができない勤務地への転勤を命じられた」
マタニティハラスメント防止が、企業の義務に
そのようななか、政府は今国会で関連法を改正し、2017年1月以降のマタニティハラスメント防止策を企業に義務づける「育児・介護休業制度の改正」の実施を目指しています。
①社内にマタニティハラスメントを受けた人が相談できる窓口を設置する
②就業規則などの社内規定において、違反例を明示する
③従業員に対し、マタニティハラスメントに関する知識を広めるため研修を実施する
など、これまでよりも具体的な対策が企業に義務づけられることになります。
国としての対策や相談窓口の整備も進み、妊娠・出産・育児休業の取得などを理由として、「解雇・雇い止め、降格等」の不利益取扱いを行った場合は行政指導が行われ、さらに悪質な場合には事業主名の公表も行われます。また、裁判となった場合には、解決金や損害賠償金、慰謝料を支払わなければならなくなる可能性もでてきます。
マタニティハラスメントのない職場環境を実現するために
少子高齢化にともない、日本の労働人口は減少し続けるいっぽうです。政府も「一億総活躍社会」というスローガンを掲げ、若者・高齢者・女性・男性・障害者や難病のある方も社会で活躍できる社会の実現を目指し、さまざまな取り組みを始めました。
その具体的な目標のひとつに、「希望出生率(※)1.8%の実現」も入っています。そのためには、働く女性が安心して出産・育児と仕事を両立できる環境の整備は重要です。
※子どもを産みたいという人の希望が全て叶った場合の出生率です。
しかし、環境や仕組みづくりよりもすぐにできる大切なことは「共に働く仲間として、私たちの意識を変えること」です。職場の上司や同僚の育休への理解や配慮がもう少し深まるだけで、育児休業をとりまく環境はかなり変わるのではないでしょうか。
社会保険労務士法人アールワン 高澤 留美子(たかさわるみこ)
社会保険労務士事務所を開設して、歳月がたちました。最初の事務所は自宅の子ども部屋でした。お客様と本音でつながっている「パートナー」になれるよう、日々研鑽しています。モットーは「人間万事塞翁が馬」です。
140社の人事労務をサポートする、東京都千代田区の社会保険労務士法人アールワンが提供。人事労務ご担当者の方の実務に役立つ情報をお届けします。
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