20歳になる前の障害は、年金の加入期間がなくても障害年金の対象となります。
2016/03/30
こんにちは。東京都千代田区の社会保険労務士法人アールワンの高澤(たかさわ)です。
さて、今回は20歳よりも若い人の傷病による障害基礎年金についてです。
そもそも、年金の基本的な考えとして、年金制度に加入して保険料を納付することが、年金を受け取る前提条件となっています。これは、障害年金も同様です。
しかし、10代から働き始めて厚生年金に加入する人以外は、年金に加入ができるのは通常20歳からとなります。それでは、20歳になる前に障害を持つことになった人は、障害年金を受け取ることができないのでしょうか?
そこで登場するのが、今回説明する国民年金の「20歳前の傷病による障害基礎年金」という制度です。
どのような人が受け取ることができるのか?
対象となるのは、次のような人です。
・生まれつき障害をお持ちの方
・20歳前に障害が残ってしまった方
・20歳前の傷病が原因で20歳を過ぎた後に障害になった方
また、この場合の障害とは、国民年金の定める基準で障害の程度が「1級」または「2級」のことです。(身体障害者手帳の等級とは異なるので、注意が必要です)
いつから受け取ることができるのか?
年金の請求ができるのは、「20歳になる日」(=20歳の誕生日の前日)以降の「障害認定日」からとなります。
「障害認定日」とは次のいずれかを指します。
1. 初診日から1年6ヶ月が経過した日
2. 初診日から1年6ヶ月が経過する前に傷病が治癒した場合は、その「治癒日」
1か2のいずれかの日が20歳より前だった場合は、「20歳になる日」が認定日となります。
例えば、
*15歳のときに初診日があった場合
→ 認定日は「20歳になる日」となります
*初診日から1年6ヶ月後の日付、あるいは治癒日が、20歳を過ぎている場合
→ 「初診日から1年6ヶ月後」もしくは「治癒日」が認定日となります
仮に初診日が不明であっても、認められるケースもあります。また、先天性の疾病の場合は初診日の証明は必要ありません。
受け取れる金額は?
「20歳前の傷病による障害基礎年金」の受給金額は、障害の程度によって異なります。
1級の場合 ・・・ 975,100円/年(81,258円/月)
2級の場合 ・・・ 780,100円/年(65,008円/月)
また、子どもがいる場合には、別途その分の加算が発生します。
第一子、第二子 224,500円/年(18,708円/月)
第三子 74,800円/年( 6,233円/月)
支給が停止される条件とは?
通常の障害年金とは異なり、20歳前傷病の障害年金については、固有の支給停止条件があります。受給権者の前年の所得が一定額を超えるときには、受給している年金の全部または2分の1の額(子の加算額は計算から除く)が支給停止となります。
この所得制限は二段階制となっています。例えば、ご本人ひとり世帯の場合とすると、
年間の給与収入額が5,180,000円(431,666円/月)を超える場合 → 年金額の2分の1が支給停止
年間の給与収入額が6,452,000円(537,666円/月)を超える場合 → 年金額の全額が支給停止
となります。(この上限額については、扶養親族の人数によって変動します)
このように、20歳前傷病の障害年金は保険料を一切払わなくても受け取ることができますが、その代わりに、通常の障害年金には無い支給停止条件がついているのです。
さて、この「20歳前の障害年金」について、なかには「保険料を納めていないから・・・」という理由で気後れしてしまい、請求をためらってしまう方もいらっしゃるようです。しかし、これは当然の権利として請求をするべきです。
なぜなら、この制度は、通常の障害年金にあるような相互扶助の考えに基づいているわけではありません。あくまでも、障害によって日々の活動に制限がある方を支援することが目的だからです。
この制度を利用することで、若くして障害を持つことになったご本人はもちろん、そうしたお子さんを育てる親御さんが、少しでも安心して生活を送っていただければと思います。
社会保険労務士法人アールワン 高澤 留美子(たかさわるみこ)
社会保険労務士事務所を開設して、歳月がたちました。最初の事務所は自宅の子ども部屋でした。お客様と本音でつながっている「パートナー」になれるよう、日々研鑽しています。モットーは「人間万事塞翁が馬」です。
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