出張時の移動時間は、「原則」は労働時間にカウントされません。
2016/04/10
こんにちは。千代田区の社会保険労務士法人アールワンの濵中(はまなか)です。最近のお気に入りは、スーパー銭湯です。サウナと水風呂のコンビネーションで、日頃たまった疲れを撃退しています。
あなたの会社では、社員が出張をすることはありますか?出張となると、電車や飛行機など、往復で何時間もの移動時間が発生するはずです。さて、その移動時間を、会社は労働時間としてカウントする必要があるのでしょうか?
ここでの正解は「労働時間としてカウントしない」ですが、例外もあることに注意が必要です。
裁判でも、移動時間は「労働時間ではない」ことに。
そもそも出張の目的は、「出張先で業務を行うため」であり、そのための移動は「会社で業務を行なうため」の「日常の出勤」と同じ性質のものと考えられています。そのため、これは労働時間には当たらない、というのが法令の見解です。
これについては、実際に次のような裁判の判例も存在しています。
《外国に出張した従業員の時間外手当の計算にあたって、会社が「移動時間は実勤務時間ではない」として計算に含めなかったことに対して、従業員が時間外手当を請求したケース》
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【判決】移動時間は労働拘束性の程度が低く、これが実労働時間に当たると解釈するのは困難であることから、直ちに所定就業時間内における移動時間が時間外手当の支給対象となる実勤務時間に当たるとの解釈を導き出すことはできない。(横河電機事件 東京地裁平6.9.27判決)
「えっ、海外出張の移動時間も・・・?」という印象を持つ人もいるかもしれませんが、この判例が存在する以上は、移動時間が労働時間とみなされるケースはほぼ無いように思えますね。
しかし、これには例外があります。
ただし、労働時間とみなされるケースも。
それは「物品の運搬を目的とした出張」のときです。
この場合は、移動中においても物品の管理義務が生じるため、「業務中」(=労働時間)とみなされるのです。
例えば、イベント制作会社が、自社で作った作品を展示場まで運ぶというケースでは、運ぶこと自体に業務性があるため、労働時間とされる可能性が高くなります。
上記のような例外のパターンもありますが、「出張中の移動時間は労働時間として取り扱わない」ということが原則ですので、会社は従業員とその点をあらかじめ共有しておくべきです。
ちなみに、出張時には日報を作成するという会社も多いと思いますが、それはもちろん労働時間となります。そのため、業務が終了した時点で日報を出してもらい、日報提出後については会社から携帯電話などに連絡せず、本人が自由に使える時間としておくことが望ましいでしょう。
さて、移動時間については、今まで述べてきたとおりですが、現実には出張のどこからどこまでを労働時間として取り扱うべきなのか、その判断に迷うケースもあります。(出張日の移動時間を除いたら、そもそもの所定労働時間に満たないこともあるのでは?)
そのような都度の判断を避けるために、出張については「みなし労働時間」として、就業規則において「所定労働時間、労働したとみなす」と決めておくことをおすすめします。
社会保険労務士法人アールワン 濵中 伸介(はまなかしんすけ)
お客様との「関係性」の構築を大切に考えています。私たちのやることが企業やそこで働く従業員の成長・発展に繋がるよう日々奮闘しています。趣味はランニングとミスチル、それとお酒を飲みながら人と会話をすることです。みなさん、よろしければお声掛けください!
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