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裁判もさらにシビアに!「定額残業代制」に求められるリスク管理とは。

2016/05/20

裁判もさらにシビアに!「定額残業代制」に求められるリスク管理とは。 - 社会保険労務士法人アールワン | 東京都千代田区

こんにちは。千代田区の社会保険労務士法人アールワンの濵中(はまなか)です。

今回のトピックは、「定額残業代」の安全な運用についてです。

これまでは「1ヵ月の残業時間が月100時間を超える事業所」が、労働基準監督署の立ち入り検査の対象とされていました。しかし先日、政府より「1ヵ月80時間を超える事業所」にまで対象を広げるという方針が発表されたのです。

長時間労働に対する風向きが厳しくなるなかで、「定額残業代」制に対する裁判所の判断も厳しくなっています。そこで今回は、最近の裁判所の判例の傾向を踏まえて、より会社にとってリスクが低い定額残業代制の運用についてお伝えします。

 

企業の経営者・担当者さま

「もっと詳しく知りたい」「今この件で困っている」そのようなときには、こちらよりご連絡ください。

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定額残業代運用で、必須となる3つのポイント

まずは、定額残業代を採用するにあたって、必須となるポイントです。近年の裁判例においても、これらのポイントが判決に大きく影響しています。

 

①定額残業代が、他の賃金と明確に区別されていること
・・・NG例)「職務手当の一部に定額残業代を含む」

②定額残業代の「金額」および「何時間分の割増賃金を含むか」を明示すること
・・・NG例)「基本給30万円に、20時間分の残業代を含む」※金額の明示がない

③時間外労働の割増賃金の額が定額残業代を上回った場合には、その差額を支給する旨を雇用契約書に明示すること

 

特に裁判において、判決に影響を与えるポイント

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裁判においては、定額残業代が「雇用契約書で明示されている」という最低限の事項に加え、さまざまな要素を考慮したうえで「本当に定額残業代としての運用がされているのか?」という実質的な部分が重視されます。

そのため、ある一つの要素だけで定額残業代として認められるかそうでないかが決まる訳ではありません。しかし、最近の裁判例で判決に大きな影響を与えたポイントや、争点になりやすいポイントがありますのでご紹介します。

 

*定額残業代が労働時間以外で変動している場合

本来、定額残業代は基本給などの固定的賃金を基礎として設定されます。そのため、たとえば「業績や勤続年数等で定額残業代が変動する」という場合には、残業代として無効と判断される可能性があります。

・・・NG例)
「定額残業代を、昨年の人事考課を基に決めている」
「毎月の業績によって、定額残業代が変動している」

 

*差額支給の実態がない場合

定額残業代に含まれる残業時間を超えたときに発生する「差額支給」を一度も行っていない、という場合も裁判ではマイナスとなります。その旨を雇用契約書に明示していることよりも、実質的に制度が正しく運用されていることのほうが重視されるので注意が必要です。

 

*従業員の同意が書面で残っていない場合

定額残業代について、口頭で説明をしているだけで、就業規則や雇用契約書上では明示していないというケースがよく見受けられます。裁判において、従業員の同意を得ていたか否かは重要な判断材料となるため、必ず同意を書面として残して下さい。

 

定額残業代を導入するメリットとは?

近年では、退職後の従業員が未払い残業代の請求を弁護士に相談するケースが増えてきており、会社の訴訟リスクも高まっています。そのため、「残業代削減」という観点のみで定額残業代を安易に導入することは、裁判例から見ても避けるべきです。

しかし、仕事を効率的に行う人よりも、同じ仕事量でも残業時間が長い人の賃金が高くなるという、現行の労働基準法の矛盾を解消する方法という観点では、定額残業代は依然有効な手段といえます。

そもそも、会社として定額残業代を導入する本来の目的は、『残業代込みで人件費を予算化すること』です。それに比べると、『残業代の削減』は、従業員が時間の意識を持つことで、仕事の能率を上げられたときに初めて得られる副次的なものにすぎません。このような考えをもとに、定額残業代を導入して、結果的に「規定時間の範囲内で業務を回す仕組み」を構築することができれば、会社と従業員の双方にとって大きなメリットとなるはずです。

 

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濵中 伸介(はまなかしんすけ)のイメージ

執筆者

社会保険労務士法人アールワン 濵中 伸介(はまなかしんすけ)
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