従業員にパソコンやスマートフォンを貸与するときは、就業規則も必ず見なおしてください!
2016/07/20
こんにちは。千代田区の社会保険労務士法人アールワンの濵中(はまなか)です。
さて、業務のために会社が従業員に「物品を貸与」することがあります。なかでも、パソコンやスマートフォン、電子タブレットなどの電子端末が貸与されることは、もはや一般的ですね。
一方、これらを従業員が私的に利用してしまえば(プライベートのメールや、業務と関係ないサイトへのアクセスなど)、業務効率を低下させるのはもちろん、情報漏えいなどのリスクにもつながるため、会社としてはそれを防がなければいけません。
そのためには、じつは就業規則が重要な役割を果たします。
貸与にあたり、就業規則に定めておくべきルール
会社が貸与した物品を、従業員が私的に利用することが認められないのは当然のことです。しかし、私的利用があったというだけで、すぐに従業員に処分を行なうことができるのでしょうか?
そのためには少なくとも、あらかじめ就業規則に「禁止される行為」を明記し、それに反した行為が行われた場合には、懲戒処分が行われること、を定めておく必要があるのです。例えば次のとおりです。
「会社が貸与した電子端末は、業務遂行に必要な範囲でのみ認め、仕事に関係のないサイトを閲覧したり、私用メールを利用するといった行為を禁止する。これに反する行為が行われた場合は、該当する懲戒処分の対象とする」
さらに、個別に誓約書も提出してもらう必要があります。
私的利用した従業員への処分が無効になることも
上記のような対応が行われないまま、社員に処分を下すとどうなるのでしょうか?会社が行った解雇が無効になった、次のような裁判例もあります。
会社貸与のパソコンを使って、就業時間中に私用メール(20日間で49件)を行なったこと等を理由に、従業員の解雇を行った。
→ これは「解雇権濫用」として無効となった
グレイワールドワイド事件(東京地裁 平成15年9月22日)
この事例では、会社の就業規則に禁止規定がありませんでした。そして「20日間で49件の使用頻度であれば、職務専念義務違反にはならない(私的メールの利用が業務遂行の妨げにならない)」という判断が下されています。つまり、ある程度までの私的使用は許容されるという判例でもあります。
この判例は、規定の有無だけで判断された結果ではありませんが、なおさら禁止規定は必須といえます。
使用状況を確認するときも、ルールが必要です
また、「私的利用が行われていないかどうか」を判断するために、端末の使用状況を確認することもあるでしょう。雇用契約上の権限としては、会社は従業員に貸与した端末における「インターネットの閲覧履歴やメールの内容、電子端末内のデータ等」を確認することができます。
とはいえ、確認する際のルールをあらかじめ定めないまま、不用意にデータの確認を行った場合には、「従業員のプライバシーを侵害した」とされるケースもあるので注意が必要です。
そのようなことにならないために、就業規則において
「会社は、従業員の貸与した電子端末の使用状況を閲覧・監視することができる」
という旨を定めておく必要があります。また、次のポイントもおさえてください。
① 閲覧する情報の利用目的をあらかじめ特定する(「私的利用の調査」など)
② 実施に関する責任者とその権限を定める
③ 情報確認が行われるということが、従業員に周知されていること
④ ①〜③が適切に実施されているかを適宜チェックする
これらを明確にしておけば、プライバシーの侵害という判断を避けつつ、会社の貸与物が業務遂行に適切に利用されているかを把握しておくことができるはずです。
言うまでもなく、就業規則に貸与物の使用規定を定める最大の目的は「従業員への抑止力」です。そのため、規則を定めるだけではなく、その内容を従業員一人ひとりに周知することが何よりも大切です。
貸与品の私的利用を無くし、それぞれの職務に専念してもらうためにも、ぜひ一度会社の就業規則を見直してみてください。
社会保険労務士法人アールワン 濵中 伸介(はまなかしんすけ)
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