裁量労働制の「OK」と「NG」をご存じですか?
2016/08/10
こんにちは。東京都千代田区の社会保険労務士法人アールワンの高澤(たかさわ)です。先日、郷里の秋田で、親戚と一泊二日の温泉ツアーに。故郷の空気や言葉、食べ物でエネルギーをたっぷり充電できました。
さて、先日「裁量労働制」についてお客様とお話をしていたときのことです。
お話をしながら「ん?何だか、かみ合わないぞ・・・」と感じる場面があったのですが、その原因は「裁量労働」=「労働者の裁量におまかせ」=「何から何まで労働者におまかせでなければならない」とお客様が思っていらっしゃることでした。
そこで今回はあらためて、裁量労働制のポイントについて説明します。
裁量労働制が認められる業務は?
裁量労働制が認められる業務の範囲は、
「業務の進め方や時間配分の決定等について、使用者が具体的な指示をすることが困難なものに限られる」
として、労働省令等により定められています。裁量労働制には、大きく「専門業務型」と「企画業務型」の2つがあり、専門業務型の対象として認められる業務は全部で19業務となっています。
※19業務の一覧はこちらのページで確認することができます。
また、企画業務型が適用されるのは、事業の運営に直接影響するような企画・立案・調査・分析などの仕事です。
そして、会社に裁量労働制を導入するにあたっては、対象となる業務や一日あたりの労働時間数などを、会社と労働者代表が労使協定で定めることが必要です。
そこで、例えば1日あたりの労働時間数を「9時間」として協定を締結したとします。そのうえで、実際には「ある日の労働時間は1時間だった」また「別のある日の労働時間は13時間だった」といった場合であっても、一律「9時間労働したとみなす」のが裁量労働制の特長です。
会社に認められない行為と、認められた行為は?
裁量労働制において、会社に『認められない行為』には、次のようなものがあります。
①始業時刻、終業時刻を指定する。
②会議・ミーティングなどに参加させるため、勤務のコアタイムを設ける。
さて、それでは逆に、裁量労働制においても次のようなものは会社に『認められた行為』であるとご存知でしたか?
①所定労働「日」を定める。
②出勤しなかった日を欠勤として、賃金から該当日数分を控除する。
③具体的な始業・終業の時刻を指定するのではなく「就業時間帯の大枠」を決めて運用する。
これらのポイントから、決して「裁量労働」=「労働者の裁量に完全におまかせ」ではないことがわかりますね。
裁量労働者の割増賃金の取り扱いは?
そして、裁量労働者における、労働時間・休憩・休暇が適用される範囲は次のとおりです。
※◯は「適用される」という意味です。
裁量労働制は、あくまでも「出勤義務がある日」を対象としています。そのため、休日勤務をした場合には、その『実労働時間に基づいて』割増賃金の支払が必要となります。
そして、深夜勤務をした場合の、割増賃金にはやや注意が必要です。「時間外労働の分はすでにみなし労働時間の中に含まれており、かつこれを含めて賃金額が定められている」と考えられるからです。そのため、深夜勤務をした場合の割増賃金の支払は(通常の「125%」ではなく)「25%」相当額となります。
私の考えでは、労働基準法の多くは「現代の企業経営の現実に追いついていない」ものです。しかし、労働者の裁量で仕事を行うことができる裁量労働制は(適用業務が限定されていますが)、そのなかではひと味違うものとして期待しています。
長時間労働やサービス残業の温床、と言われることもある裁量労働制ですが、それも運用次第です。たとえば、労使協定で対象者を決めるのではなく、従業員一人ひとりが自由に選択できるような新しい裁量労働制が認められる日はこないものでしょうか。
社会保険労務士法人アールワン 高澤 留美子(たかさわるみこ)
社会保険労務士事務所を開設して、歳月がたちました。最初の事務所は自宅の子ども部屋でした。お客様と本音でつながっている「パートナー」になれるよう、日々研鑽しています。モットーは「人間万事塞翁が馬」です。
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