会社が従業員の所持品検査をするのは違法?その条件とは?
2016/12/30
こんにちは。東京都千代田区の社会保険労務士法人アールワンの濵中(はまなか)です。先日、5歳になる娘と二人きりで映画を観に行ってきました。初デートの楽しい時間はあっという間に終わってしまいましたが、今後もこんな素敵な時間をつくっていきたいです・・・。
さて、たとえば「飲食店においてレジの売上がひんぱんに少なくなる」あるいは「高価な原材料を使用する製造業において、原材料を大量に紛失した」といったことが起きたとします。その際に(もちろん考えたくはないことですが)従業員の方の犯行が疑われるケースもありえます。
それでは、そのようなときに会社が従業員の「所持品検査」をすることは果たして認められるのでしょうか?結論を先にお伝えすると、条件が揃わない場合には「所持品検査が違法」とみなされるケースもありますので注意が必要です。
会社による所持品検査が認められる条件とは?
所持品検査が適法とみなされるためには、以下の条件がすべて揃っていることが必要になります。
①検査をする合理的な理由があること
②一般的に妥当な方法と程度であること
③制度として全従業員に対して平等に行われること
④就業規則その他明示の根拠に基づき行われること
もちろん理由なしでの所持品検査は考えられないため、①が問題となることはないでしょう。
また、②についても例えば「服の上からのボディーチェック」などの常識的な範囲であれば問題ないといえます。
しかし、③の「制度として」が大きなポイントとなります。これはつまり「常に起きうること」を想定して「所持品検査が日常的に行われている」という場合に適法と認められる、ということです。逆に言えば、「突発的なできごと」が起きたときだけ「突発的に検査をする」という対応では適法とみなされない可能性が高いのです。
④も、所持品検査の規定があらかじめ就業規則に存在している必要があるため、やはり「突発的なできごとが起きてから、はじめて所持品検査について検討する」という対応では間に合わないことになります。
そして、これらの条件が特に重要となるポイントは、「所持品検査を拒む」従業員がいた場合です。そのようなときでも、上記の①〜④の条件すべてを満たしている所持品検査であれば、それを拒んだ従業員に対する懲戒処分が過去の裁判例で認められています。
所持品検査を「しない」ために
このように「所持品検査が必要なものとして日常的に想定されている」という状況でない限りは、突発的な従業員の所持品検査は適法とみなされない可能性があり、原則として推奨できません。また、会社と従業員の信頼関係という面においても、やはり望ましい行為とは言えないでしょう。
そうなると、できるだけ「所持品検査が必要な状況が生まれない」環境づくりが必要です。一例としては、入退室の管理やセキュリティシステムの導入、パソコンのログ管理などです。
特に今の時代は、金銭や物品以上に、顧客情報や機密事項などのデータを持ち出されることが会社に大きなダメージを与えます。対策を社内にも周知することで、そのような動機自体が生まれない環境であればベストではないでしょうか。
社会保険労務士法人アールワン 濵中 伸介(はまなかしんすけ)
お客様との「関係性」の構築を大切に考えています。私たちのやることが企業やそこで働く従業員の成長・発展に繋がるよう日々奮闘しています。趣味はランニングとミスチル、それとお酒を飲みながら人と会話をすることです。みなさん、よろしければお声掛けください!
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