社会保険と所得税における、「扶養家族」の基準の違いはご存知ですか?
2017/01/30
こんにちは。東京都の社会保険労務士法人アールワンの西嶋(にしじま)です。先日、久しぶりに母校の大学の食堂に行ったら、とてもオシャレになっていてびっくりしました。なんでも、大学で唯一グッドデザイン賞を受賞したそうです!
さて、「扶養家族」とはよく聞く言葉ですが、この基準が「社会保険」と「所得税」においてそれぞれ条件が異なる、ということはご存知でしたか?
意外と混同されている方も多いようですので、今回は社会保険と所得税法上における、それぞれの「扶養家族となる条件」を整理してお伝えします。
「社会保険」における扶養の基準は?
社会保険は健康保険と厚生年金からなっており、下記条件を満たす場合に扶養家族となることができます。
・被扶養者の範囲(健康保険※)
(1)「被保険者と同居でも別居でもよい」・・・ 配偶者、子、孫、兄弟、父母、祖父母
(2)「被保険者と同居している必要」・・・3親等以内の親族(兄弟、伯叔父母、甥姪とその配偶者)
※厚生年金の被扶養者の範囲は「配偶者」に限定されています。
・扶養家族となる条件
年間収入130万円未満(60歳以上は180万未満)
・・・「収入」には給与、年金、失業給付、傷病・出産手当金、事業所得 が含まれます。また、収入は加入時点から1年間の見込み収入です。
扶養家族となれば、健康保険料が発生しません。また、厚生年金において扶養となる配偶者は、国民年金の加入者(国民年金3号被保険者)となり、やはり保険料が発生しません。
ちなみに、2016年10月からパートタイマーの社会保険加入要件が一部変更されています。
・勤務時間が週20時間以上で、1年以上の雇用見込み
・従業員501名以上の企業に勤務
この2点のいずれにも該当するパートタイマーは、「年収130万円以上」ではなく「年収106万円以上」から社会保険の加入義務が発生することになりました。
「所得税法」における扶養の基準は?
つづいては税法上における扶養の基準です。これは、社会保険とは全く異なった条件となります。
・被扶養者の範囲
下記3点の「すべて」に該当する必要があります
①納税者の6親等以内の血族、もしくは3親等以内の姻族
②納税者と同一生計である(別居していても生活費、学費等を送金している等)
③年間の給与収入が103万円以下(年間の合計所得38万円以下)
税法上で扶養家族がいると、納税者が「所得控除」を受けることができ、それによって税金が安くなります。
ちなみに、先に述べた社会保険では「今後の見込み収入」が扶養の可否の条件でしたが、所得税法上では直近の1月~12月の年単位で判断され、年末時点で合計所得が38万円以下かどうかで判断します。
そして、この控除のうち「配偶者控除」の収入要件が平成30年1月より「年間103万円以下」から「年間150万円以下」へと変更される予定となっています。
年間収入が130万円を超える場合には注意を
所得税法の配偶者控除の収入要件が「年間103万円以下」から「年間150万円以下」となることで、扶養の範囲のままで収入を増やすことを考える方も多いはずです。しかし、そのときに社会保険の扶養の収入要件は「年間130万円未満」のままであることに注意が必要です。
つまり、今まで年間103万円以下で働いていた方が、今後、年間130万円を超える収入を得た場合には、所得税法においては扶養家族のままでいられますが、社会保険料の支払いが新たに発生することになります。
現状、家庭とパートの仕事を両立させたいと考えている方は、所得税法上と社会保険上のいずれにおいても扶養家族となる範囲の収入で働いている方が多いと思います。そのため、配偶者控除の上限収入が引き上げられることは、多くのパートタイマーの方にとって自分自身の働き方を見直すきっかけとなるはずです。
そのときに扶養の範囲内で働くことが、家計にとって一番プラスになるとは必ずしも限りません。その判断ができるように正しい情報を理解した上で、「家計にどのくらいの収入が必要なのか」「そのために、どのくらい働くべきなのか」を事前に想定しておくことが大切です。
社会保険労務士法人アールワン 西嶋 一樹(にしじまかずき)
サッカーと水泳が好きな37歳です。担当しているクライアントのほとんどが100人未満の中小規模の会社様ですので、大企業とは異なるスタイルでの人事労務のリスクマネジメントに腐心しています。お客様の要望に迅速に対応できるよう、日々精進していきます。週末は家族と一緒に近所を散歩するなどしてリラックスして過ごしています。
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