「勤務間インターバル」の導入時に決めなければいけない3つのポイントは?
2017/03/20
こんにちは。東京都千代田区の社会保険労務士法人アールワンの濵中(はまなか)です。
ここ最近、「働き方改革」という言葉を耳にする機会が増えています。その一環として、厚生労働省は「勤務間インターバル制度」の普及に取り組んでおり、制度を導入した企業への助成金制度も新設されています。
それでは、あらゆる企業にとって勤務間インターバル制度の導入は望ましいことなのでしょうか?今回は「勤務間インターバル制度の概要」と「会社が決めるべき3つのポイント」、最後に「制度導入のリスク」についてお伝えします。
「勤務間インターバル」とは?
勤務間インターバルとは
「終業から次の始業までの間に一定時間以上の休息時間を確保することで、労働者の健康とワーク・ライフ・バランスを確保しよう」
という制度です。
例えば「11時間」の休息時間を設ける企業の場合、ある日の退勤時刻が前日の深夜0時であれば、その翌日の始業時刻は午前11時以降、となります。
※特に、トラックやタクシー等の自動車運転業では、厚生労働省が「労働時間の改善基準」の中で、会社に対して「8時間以上の休息時間」を設けるよう指導しています。
ちなみに「休息時間」は労働法では明確に定義されていませんが、前述の自動車運送業の改善基準においては「勤務と次の勤務の間で睡眠時間を含む労働者の生活時間として労働者にとって全く自由な時間」とされています。
導入時に会社が決めるべき3つのポイント
「勤務間インターバル制度」は、労働法に定めのあるものではありません。そのため、制度を導入するときは、その運用ルールを会社ごとに決めることができます。
1.休息時間を決めましょう
休息時間の設定は「最低何時間は確保しなければならない」という定めがないため、会社が決める必要があります。ただし、厚生労働省の助成金では、9時間以上の休息時間を設けた企業が支給対象となります。
また、休息時間を設けたことにより翌日の始業時刻が遅くなった場合の終業時刻も決めておきましょう。《始業時刻のみを遅くして終業時刻は変更しない》あるいは《始業時刻が遅くなったぶん、終業時刻も遅くする》の2つのパターンが考えられます。
2. 適用される対象者の範囲を決めましょう
勤務間インターバルが適用される対象者を限定することができます。例えば、管理職や事務職に限定したり、一部の事業所・支店のみを対象とすることも可能です。
3. 賃金の控除を行なうか決めましょう
始業時刻が遅くなったものの終業時刻は変わらない場合には、勤務時間が短くなったぶん賃金の控除を行うことができます。(その場合、従業員の立場から見れば、会社の取り決めで遅く出社したことで賃金が控除される、とも言えます)
例えば、通常の就業時間が9:00~18:00の会社において、勤務間インターバルの導入により、翌日の就業時間が11:00~18:00になったとします。その際に「9:00~11:00」の2時間分の賃金控除をするかしないかは、会社ごとに決めることになります。
賃金控除の取り扱いは、制度の導入前に従業員との合意のもとで慎重にルールを定める必要があります。
最後に、上記で決めた1〜3のルールは、制度を導入する時点で就業規則に定める必要があります。
そもそも勤務間インターバル制度は、時間外労働を行った労働者の健康を確保するための制度です。そのため、健康確保という点では効果を期待できるものの、これが直接、長時間労働の是正につながるわけではありません。始業時刻が遅くなったことで、終業時刻も遅くなり、結果として、深夜残業が増えてしまうといったケースも考えられます。
そして、日常的に始業時刻と終業時刻が変動することで就業時間が不規則になったり、従業員の勤務時間の管理が煩雑になるというリスクもあります。たとえば「月末などで一時的に時間外労働が多くなる部署や職種に限定する」など、会社の実態にあわせた導入方法や運用ルールを慎重に検討していくべきでしょう。
社会保険労務士法人アールワン 濵中 伸介(はまなかしんすけ)
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