これは意外?採用担当者が応募者に「聞いてはいけないこと」と「必ず聞くべきこと」とは。
2017/04/10
こんにちは。東京都千代田区の社会保険労務士法人アールワンの笹沼(ささぬま)です。先日、数年ぶりに40度近い熱を出してダウンしてしまいました。幸いにも数日で復調したのですが、「自分は大丈夫」という過信から体調管理が甘くなっていたのでしょう。健康の大切さが身にしみました!
さて、一般的に企業の採用選考時の面接では、採用担当者と応募者がさまざまな会話をします。なかには「受け答えを見るため」「リラックスしてもらうため」などの理由で、採用担当者が他愛もない雑談のような質問をすることもあることでしょう。
しかし、たとえば「お父さんはどんなお仕事をされているのですか」「尊敬している人はいますか」などといった質問は、じつは職業安定法によって禁止されているということはご存じでしょうか?
今回は採用選考時において「聞いてはいけないこと」と、そして逆に会社のリスク対策として「必ず聞くべきこと」をお伝えします。
選考時に「聞いてはいけないこと」
面接時に、以下を尋ねることは「職業安定法第5条の4」により、原則として禁止されています。
①本籍、出生地に関すること
②家族(職業、続柄、健康、地位、学歴、収入等)に関すること
③住宅状況に関すること
※住んでいるエリアの特徴(高級住宅地なのか、下町なのかなど)や、持ち家または賃貸か、広さ、などです。
④生活環境、家庭環境に関すること
⑤宗教に関すること
⑥支持政党に関すること
⑦人生観、生活信条に関すること
⑧尊敬する人物に関すること
⑨思想に関すること
⑩労働組合、学生運動など社会運動に関すること
⑪購読新聞、雑誌、愛読書等に関すること
つまり「本人の生活や家庭環境に踏み込んだ質問」や「仕事と直接は関係ない思想に抵触する(可能性がある)質問」が禁止されている、といえます。
ちなみにこれらを破ったとしても現時点で罰則があるわけではありません。しかし、求職者がハローワークなどに相談に行った場合には、指導・注意を受けることが考えられます。また、「言いたくもない家庭環境のことを無理やり言わされた」などの風評リスクも、可能性としてはありえるでしょう。
選考時に「必ず聞くべき」こと
では逆に、選考時点で「必ず聞いておくべきこと」はなんでしょうか?
それは本人の「既往歴」(これまでにどのような病気にかかったか、アレルギーや持病、大きなけがをした経験はないかなど)についてです。
これは採用担当者によっては「聞いてはいけないのでは?」と考える人も多いようですが、決してそんなことはありません。労働安全衛生法65条の3では「事業者は、労働者の健康に配慮して、労働者の従事する作業を適切に管理するように努めなければならない」とされています。また同時に、入社予定者は自身の健康状況について、会社に正しく申告する義務があるといえます。
たとえば従業員に持病があり、就労が原因によってそれが悪化したとします。その場合、本人からの告知が無かったため「持病のことを会社が知らなかった」としても、会社が安全配慮義務違反を問われることがあるのです。「知らなかったのだから、会社に責任は無い」という言い分はこの場合通用しません。(ただし、過失割合で責任が軽減される場合もあります)
持病の有無や既往歴については、面接時に聞きにくい場合もありますので、エントリーシートや質問票で「既往歴はありますか」「採用後に配慮してほしい健康状況等はありますか」なとの項目を設けて確認しても良いでしょう。
※ただし、特定の者に限定し、また本人の同意を得ずに「HIV検査、B・C型肝炎感染の検査等」を実施することは認められておりません。
個人情報の観点からも「個人の病歴はデリケートな情報だから聞いてはいけない」と誤解されがちです。しかし、本人が病歴を申告せず、会社側が何も配慮できないまま勤務した結果として持病が悪化すれば、取り返しのつかない状況に陥る可能性もあります。
採用する従業員、そして会社を守るために、採用選考時に確認すべき質問、確認してはいけない質問について、採用担当者同士で再度確認をしておきましょう。
社会保険労務士法人アールワン 笹沼 瞬(ささぬましゅん)
生命保険会社の営業職から転じて、入社13年目。担当クライアントの多くが社員100名以上の規模の会社様ということもあり、法改正の情報は特に早めにキャッチアップすることを心がけています。得意な分野の助成金・補助金申請はずいぶんと経験値が増えてきました。趣味でテニス(最近はインドアが多いです)をやっていますので、テニスやられる方はぜひお声かけください。
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