利用には課題も・・・国が未払い賃金を支払う「賃金立替払い制度」をご存知でしょうか?
2017/12/30
こんにちは。東京都の社会保険労務士法人アールワンの西嶋(にしじま)です。最近、近所に美味しいラーメン店を見つけたので週末よく通っていたのですが、通い過ぎたせいで体重が若干気になり始めています・・。
つい先日、お客様から「賃金立替払い制度」についてお問い合わせを頂くことがありましたので、今回はこの制度についてご紹介したいと思います。これは倒産した会社にかわって、政府が従業員に未払い賃金の一部を支払うという制度ですが、その制度自体があまり知られておらず、実際の利用にはまだ課題もあるというのが現状です。
「賃金立替払い制度」とは?
会社の倒産(事実上の倒産を含む)にともない、賃金が支払われないまま退職した労働者に対して、未払い賃金の一部を政府(独立行政法人労働者健康安全機構)が事業主に代わって立替え払いする制度です。
立替えの対象となるのは、
・毎月定期的に支払われる給与
・退職金(就業規則に基づく)
であり、立替払いされる金額は「年齢ごとに定められた限度額の80%」となります。
例1:退職日の年齢が「33歳」で、未払賃金総額「180万円」(定期賃金60万円+退職金120万円)の場合
→ 立替払い額は144万円(=180万円×80% )となります。
例2:退職日の年齢が「46歳」で、未払賃金総額「400万円」(定期賃金130万円+退職金270万円)の場合
→ 限度額の370万円を超えているので、立替払い額は296万円となります。
立替払いを受けることができる人は?
企業倒産にともない、賃金が支払われないまま退職した労働者(パート、アルバイトも含む)で、<裁判所への破産開始手等の申立日>または<労働基準監督署長に対する事実上の倒産(中小事業主のみ)>の認定申請日の6ヶ月前の日から2年の間に当該企業を退職した方となります。
その労働者の方が退職してから6ヶ月以内に、会社が裁判所へ破産手続きを開始する、または労働基準監督署長への認定申請が必要ということです。
立替払い制度を利用するにあたっての課題は?
仕組みとしては上記のとおりですが、この立替払い制度を実際に利用するにあたっては
*受給するまでに日数を要する
*会社ではなく、本人が申請をしなければいけない
という課題があります。
法律上の倒産や事実上の倒産にかかわらず、従業員であった人が個人で、破産管財人(弁護士等)や労働基準監督署から未払賃金の確認の証明を先にもらわなければ立替払いの申請自体ができません。この証明をもらうまでにどのくらいの時間を要するのかは状況によりますが、最低でも1ヶ月は要します。(事実上の倒産の場合だと、最低でも2ヶ月ほどかかる見込みです)
その証明を取得した後に、労働者健康安全機構に立替払いの申請を行って、その1ヶ月〜1ヶ月半後に支給されることになります。そのため、トータルでは支給までに約3ヶ月~4ヶ月ほどの時間を要することになります。
この立替払い制度は税金から支給されるため、証明や審査に時間がかかるのは当然のことです。しかし同時に、賃金が未払いのままやむを得ず退職した方を救済するための制度ですから、たとえば「未払賃金の証明と同時に立替払いの支給ができる」ようにするなど、できるだけ迅速に支給できる体制が今後必要です。
もちろん、何よりも優先されるべきことは、会社の従業員の方がこの制度を利用しなければならない事態にならないことです。私たちアールワンは、常にお客さまの会社の課題や問題を共有しながら、共にそれを解決していく存在でありたいと強く思います。
社会保険労務士法人アールワン 西嶋 一樹(にしじまかずき)
サッカーと水泳が好きな37歳です。担当しているクライアントのほとんどが100人未満の中小規模の会社様ですので、大企業とは異なるスタイルでの人事労務のリスクマネジメントに腐心しています。お客様の要望に迅速に対応できるよう、日々精進していきます。週末は家族と一緒に近所を散歩するなどしてリラックスして過ごしています。
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