入籍していなくても遺族年金の対象に。税金と社会保険における「配偶者」の違い。
2018/03/10
こんにちは。東京都の社会保険労務士法人アールワンの高澤(たかさわ)です。冬季オリンピックで競技を終えた多くの選手が「ここまで支えてくれた人たちへの感謝の気持ちでいっぱいです」とおっしゃる姿に、何度もじーんとしてしまいました。その場面が見たくて、テレビの前にいたような気がします。
2018年1月から、所得税の配偶者控除・配偶者特別控除が改正となりました。この改正により、たとえば夫が会社員、妻がパート勤務として、これまでは夫が38万円の配偶者控除を受けるためには妻の年収は「103万円以下」であることが条件でしたが、これからは「150万円以下」となります。
ところで、税金と社会保険の大きな違いとして、この「配偶者」の要件が異なるというポイントがあります。今回はこの点について、私が10年ほど前にご依頼を受けた遺族年金請求のエピソードをからめてご説明します。
入籍していなければ「配偶者」とみなされない?
そのとき、急性心筋梗塞で急死された方は63歳男性(仮にAさん)、遺されたのは62歳女性(仮にB子さん)。なんとAさんの死亡時、「お二人は翌週に入籍する予定だった」という状況でした。
お話を伺ったところ、実はお二人は30代のころはれっきとしたご夫婦でした。離婚をして長い年月は過ぎたものの、やはり「この人と残りの時間を過ごしたい」というお互いの思いが一致し、入籍予定だったのです。
すでにご一緒に暮らしはじめてから1ヵ月がたっており、生活費も渡され、新生活の家電品も購入されていた矢先のことでした。
この場合、社労士が依頼を受けたところで遺族年金は支給されないのでは?と思う方は多いのではないでしょうか。しかし、ここでポイントとなるのが社会保険における「配偶者」の定義です。
税金と社会保険における「配偶者」の違い
税金(所得税や相続税)における配偶者とは、なにしろ籍が入っていることが必須となります。(たとえ何年も会っていなくても、です)
しかし、社会保険では、籍が入っていなくても(内縁関係でも)一緒に暮らしていて、生計維持関係があれば(遺族年金の受給においては、年収850万円未満であるという収入要件もありますが)配偶者となります。
そのため、私はB子さんのお話をお伺いして、通常の書類作成や添付書類の他に「申立書」と「生計維持・同一証明書」を慎重に作成して年金事務所に提出しました。
入籍していなくても、様々な権利の対象に
その後にB子さんから「遺族年金の証書が送られてきました」というお電話をいただいた瞬間の安堵はいまだによくおぼえています。遺族年金は月額で約11万円となりました。この金額は、B子さんが65歳になると変更となるものの、再婚をしない限りは遺族年金の権利が無くなるということはありません。(なお、この場合の「再婚」は内縁関係も含まれます)
この「籍が入っていなくても(内縁関係でも)、一緒に暮らしていて、生計維持関係があれば配偶者とする」という定義は、社会保険の領域ではすべて共通です。入籍していない配偶者であっても、年収130万円以下で第三号被保険者になれたり、障害年金の受け取り金額が加算される対象になったりします。また、この考え方は労災保険においても同様です。
それにしても、内縁の妻は「年末調整の控除対象配偶者にはなれず」「夫が死亡しても相続人にはなれず」、しかし「第三号被保険者になれる」「遺族年金の受給者になれる」など、分野によって配偶者の定義が違うというのはなんともわかりにくいことですね。
この記事を読んで「そういうことなら、今からでも請求ができるのでは・・・?」という方がもしもいらっしゃいましたら、ぜひ当所までご相談ください。
社会保険労務士法人アールワン 高澤 留美子(たかさわるみこ)
社会保険労務士事務所を開設して、歳月がたちました。最初の事務所は自宅の子ども部屋でした。お客様と本音でつながっている「パートナー」になれるよう、日々研鑽しています。モットーは「人間万事塞翁が馬」です。
140社の人事労務をサポートする、東京都千代田区の社会保険労務士法人アールワンが提供。人事労務ご担当者の方の実務に役立つ情報をお届けします。
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