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自宅での待機時間や出張時の移動時間は、労働時間に該当するのでしょうか?

2018/04/10

自宅での待機時間や出張時の移動時間は、労働時間に該当するのでしょうか? - 社会保険労務士法人アールワン | 東京都千代田区

こんにちは。東京都の社会保険労務士法人アールワンの笹沼(ささぬま)です。先日、友人と初心者だけのバレーボール合宿に参加してきました。両腕を真っ赤に腫らし、膝にはアザも作りましたが、久しぶりに無我夢中でスポーツに没頭した休日でした。スポーツ後のお酒の味は格別だったものの、翌日にはすさまじい筋肉痛に悩まされました…。

会社において、どこからどこまでが労働時間にあたるのか?というのは、ときに判断が難しいものです。特に「緊急呼び出しに備えた自宅待機の時間は?」「出張時の移動時間は?」といったケースでは、必ずしも正解がひとつではないため、頭を悩ませる担当者のかたも多いのではないでしょうか。

そこで今回は、それぞれのケースにおける「労働時間の正しい取り扱い」についてご説明します。

 

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そもそも「労働時間」とは?

まず、労働時間には「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」という明確な定義があります。そのため、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるかによって客観的に定められます。また、これは「労働契約、就業規則、労働協約等の定めによって決定されるものではない(三菱重工業長崎造船所事件・最一小平12.3.9)」とされています。

これはつまり「始業前に全体で執務室内の掃除をする時間は労働時間に含めない」「休憩時間中に電話対応をしても、あくまでも休憩時間中なので、労働時間にはカウントしない」などの社内の取り決めがあったとしても、法律では「労働時間」とみなされるということです。

例1:制服に着替えることが必須の場合は、着替える時間も労働時間となります。しかし、「コートを脱ぐ」等の時間は労働時間となりません。ただし、事前準備として会社が義務付けていること(始業前の清掃など)がある場合は、労働時間に該当する場合があります。

例2:参加が義務付けられている社内の勉強会・研修に参加している場合は、労働時間に該当します。ただし、参加が任意の場合は、労働時間に該当しません。

 

「待機時間」の取り扱いは?

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それでは、夜間の緊急呼出などに備え、就業場所以外(たとえば自宅)で待機をしている時間は、労働時間になるのでしょうか。これは次のように判断されます。

◇待機時間
待機時間は、労働者が自由に使うことができる時間であり、使用者の指揮監督下にあるとはいえないため、労働時間に該当しません。ただし、場所的拘束や行動制限が著しくある場合には、労働時間に該当します。

◇作業時間
待機後に緊急呼出を受けて、実際に現場で作業をした時間は、当然労働時間となります。

実労働を伴わないため、待機時間における給与支給は会社の義務ではありません。しかし、頻繁に当番があるようであれば手当等を設けた方が望ましいでしょう。実際のケースとして、医師・看護士など医療機関においては手当が設けられていることが多く、システム保守・運用等の職種では手当が設けられている会社はまだ少ないようです。

 

「出張中の労働時間」の取り扱いは?

次に、出張における移動時間の取り扱いはどうでしょうか。

出張時の移動時間は、日常の出勤に費やす時間と同一性質のものと考えられることから、労働時間にはあたりません。ただし、物品の運搬を目的とした出張の場合は、移動中も物品の管理義務が生じるため、業務中とみなされます。

通常の出勤後に出張・移動するという場合(たとえば午前中に出勤して、午後から地方に移動して、次の日から仕事をするというケース)であれば、移動時間中の自由度を勘案し、使用者の指揮監督下にあるか否かにより労働時間となるか判断することになります

また、出張時の移動が休日の場合、その日の行動が「移動のみ」であれば休日労働にはあたらず、割増賃金の支払義務はありません。ただし、休日に移動することを余儀なくされる場合には、出張手当や日当を支給、または特別休暇として休暇を付与する、という対応が一般的に行われています。もちろん、出張先で休日に業務に従事した場合は、労働した時間数により休日労働手当の支給を行わなければなりません。

 

このように会社は「出張における移動時間や待機時間は労働時間とみなさない」という判断ができますが、その反面、従業員には「会社の業務命令なのだから、移動や待機時間も全て労働時間としてカウントされるはず」という感覚の人も多いことでしょう。

そのような認識の相違からトラブルとなることを防ぐためにも、会社としては夜間の緊急対応や出張時には、労働時間の考え方やその間に支給される手当や特別休暇等について、事前に従業員に十分に説明しておくことが必要です。

 

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笹沼 瞬(ささぬましゅん)のイメージ

執筆者

社会保険労務士法人アールワン 笹沼 瞬(ささぬましゅん)
生命保険会社の営業職から転じて、入社13年目。担当クライアントの多くが社員100名以上の規模の会社様ということもあり、法改正の情報は特に早めにキャッチアップすることを心がけています。得意な分野の助成金・補助金申請はずいぶんと経験値が増えてきました。趣味でテニス(最近はインドアが多いです)をやっていますので、テニスやられる方はぜひお声かけください。