2018年の法改正により「求人票と実際の労働条件が違う」というトラブルには一層の注意が必要です!
2018/04/20
こんにちは。東京都の社会保険労務士法人アールワンの西嶋(にしじま)です。暖かな季節になり、隣の家で飼われている猫が玄関先で日光浴をしているのをよく見かけるようになりました。その可愛い姿に癒やされるのが、最近の朝の通勤の楽しみです!
昨今では求人票をめぐるトラブルが増加しており、「求人票に記載されていた労働条件と実際の労働条件が違う」という求職者側からの苦情が訴訟問題にまで発展するケースまで見られるようになっています。そこで、このような求職者と会社間のトラブル防止のため、2018年1月に職業安定法の改正が行われました。これは民間の求人媒体も対象であり、違反した場合には募集企業に対する罰則もあります。
そこで、今回はその改正内容のポイントと、それを踏まえた会社の今後の対応方法についてお伝えします。
2018年1月の職業安定法の改正内容
①企業が求人票で明示した労働条件と実際の労働条件を変更する場合には、雇用契約を締結する前に、その変更した内容(どこがどのように変更されたのか)を求職者に書面等で明示することになりました。
②求人票において明示すべき事項として、以下の5点が追加されました。
□試用期間に関する事項(有無と期間)
□労働者を雇用しようとする者の代表者名または会社名
□裁量労働制を採用する場合はその旨
□固定残業代を採用する場合は「固定残業代を除いた基本給の額」「固定残業の労働時間数と金額」「固定残業時間を超えた時間外労働に対して割増賃金を追加で支給する旨」
(記載例)基本給:25万/月 固定残業手当:4万円/月(時間外労働の有無にかかわらず、20時間分の時間外手当を支給)※固定残業時間を超える時間外労働、休日労働および深夜労働が発生した場合は追加で割増賃金を支給します。
□労働者を派遣労働者として雇用しようとする場合はその旨
これらの「労働条件の明示や労働条件変更の明示義務」に違反した場合、「厚生労働省の指導監督や勧告、企業名の公表」などの罰則となっています。さらに、虚偽の条件を提示して求人の申込みを行った場合には「6月以下の懲役、又は30万円以下の罰金」となります。
改正を受けて、企業の今後の対応は?
それでは、今後の求人募集や採用にあたって企業は具体的にどのような点に注意して対応すべきでしょうか?今回は5つのポイントをお伝えします。
①年齢・経験・実績を踏まえて労働条件を決定する場合、求人票に断定的な条件記載はせず、面談後に決定する旨を記載すること。
(記載例):基本給25万円~30万円(能力・経験等を考慮し面接後に決定する)
②求人票に記載した労働条件の変更を行う場合は、応募者に早めに伝えること。特に、応募者がまだ在職中の場合は、在職中の会社に退職の意思表示をする前に伝える必要があります。
③労働条件の変更を行う場合には、当初の労働条件と変更された労働条件を対照できる説明文書を書面で交付すること。交付する際には直接面談した上で変更の理由を説明し、本人の承諾を得ることが必要です。
④労働条件に関して疑問点の有無を確認する機会を用意すること。特に賃金に関する部分(固定残業代等)はトラブルが多いため、できるだけ質問してもらい、誤解が生じないように努めましょう。
⑤労働条件の変更がある場合には、求職者が変更された労働条件での入社を検討する期間を与えること。変更した条件に対して明らかな承諾があったうえでの入社、と客観的に判断できる履歴が必要です。
求人に応募してきた人の経験や能力が当初想定したレベルには及んでいないものの、労働条件を調整したうえであれば採用したい、という場面は決して珍しくありません。今回の法改正によって、そのような場合の労働条件の伝達方法にも一層の注意が求められることになりました。
ここで手間や慎重さを惜しんだ結果として、労働条件をめぐるトラブルが入社後に発生してしまえば、採用にかかった大きなコストや労力も台無しになりかねません。誤解や違和感を抱えたまま入社することが決して無いよう、入社前の求職者とのコミュニケーションには十分にご留意ください。
社会保険労務士法人アールワン 西嶋 一樹(にしじまかずき)
サッカーと水泳が好きな37歳です。担当しているクライアントのほとんどが100人未満の中小規模の会社様ですので、大企業とは異なるスタイルでの人事労務のリスクマネジメントに腐心しています。お客様の要望に迅速に対応できるよう、日々精進していきます。週末は家族と一緒に近所を散歩するなどしてリラックスして過ごしています。
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