会社のやりかたに異を唱える「問題社員」の声にこそ、耳を傾けてはいかがでしょうか。
2018/04/30
こんにちは。東京都の社会保険労務士法人アールワンの濵中(はまなか)です。先日、娘の小学校入学式がありました。ピカピカのランドセルを背負う姿は初々しく、親ばかながらとてもかわいかったです・・・。これから元気に学校生活を満喫してほしいと思います。
さて、今回の記事は、数年前のある印象的なエピソードについての話です。当時、顧問契約をいただいたばかりの会社の社長から、次のような相談を受けたのです。
「うちの会社に問題社員がいる。とんでもない奴だから助けてほしい!」
「むちゃくちゃな主張ばかりをする社員」
そこで詳しい話をお聞きしたところ、「入社1年目なのだが、とにかく自己主張が強く、むちゃくちゃな主張ばかりしてくる。残業や有給休暇について、いつも会社に文句を言ってくる」とのことでした。
社長のご要望としては、今度その社員との話し合いの場を設けるので、そこに私も同席してほしいとのことでした。私は社長の話しぶりから、とても我の強い社員の方を想像し、面談は大変なことになるのではないか、と心中穏やかでありませんでした・・・。
その「問題社員」の要求は・・・。
そして面談当日です。私は社長と部屋で、その方が来るのを待っていました。ドアをノックする音がして入ってきた社員の方の姿を見た瞬間、私は少し意外な気持ちがしました。第一印象としては、凛とした表情をされた物静かな女性で、私が想像していた「問題社員」的なイメージとはギャップがあったためです。
そして話し合いが始まっても、やはり興奮するような口調はなく、むしろ冷静に次のように話をしていました。
「働く時間をはっきりさせてほしいです」
その方の話によると、自分が何時から何時まで働くべきなのかわからない、いったい何時を過ぎたら残業代が出るのか教えてほしい、とのことでした。その話を聞いていた私は、社長がおっしゃっていたような無茶苦茶な主張をしているという印象をまったく受けませんでした(むしろ当然の話をしていると感じました・・・)。
本当の問題は、会社のルール。
ではなぜ、これが会社にとって「むちゃくちゃな主張」となってしまったのでしょうか?
実は、その会社は一般のお客さんを相手にする仕事のため、その日の入客状況によってほぼ定時に帰れることもあれば、逆に帰りが遅くなってしまうこともありました。そのため会社の所定時間を特に決めていませんでした。そして、退勤が遅くなってしまったとしても特に残業代を支給していなかったのです。
今までは、その状況に疑問を持って会社に何かを言ってくる社員がいなかったため、ある意味会社がその環境に甘えてしまっている状況だったのです。今回、その点について疑問を持つ社員が現れたことで、会社が必要以上に反応してしまったというのが現実でした。
「これを機に、会社のルール整備を」
面談が終わったあとに、社長に感想を聞かれた私は、こうお伝えしました。
「ふだんの会社への主張の伝えかたには問題があるのかもしれませんが、私がいま聞いた内容は決してめちゃくちゃなものではありません」
それを聞いた社長は意外そうな顔をしていました。そこで私は、今のようにルールがあいまいであるほうが会社にとって今後トラブルとなる可能性があること、また優秀な人材が定着しにくい可能性があるということをお話ししました。
社長は最終的に納得していただき、会社と従業員が気持ちよく働くことができる環境を作るために、会社のルールを整備することにしました。所定労働時間や休日、有給を使うときの申請方法などについてです。そして、そのルールを雇用契約書として、一人ひとりに渡すことにしました。それにより、今まであいまいだった「何時以降に働けば残業」ということも会社と従業員のお互いにとって明確になりました。
それ以降、会社において労務面の大きなトラブルもなく、そのとき面談した社員の方は、今では会社の中心的な存在になっています。
「ルールを作ってしまってそれに縛られるのがいやだ」ということで、ルール(就業規則)を作成しない会社をたまに見受けます。しかし、それによって会社に都合のよい解釈で運営をしていれば、いつかは従業員の不満が生まれますし、そのときに最初に退職していくのは優秀な社員からではないでしょうか。
これまでの環境に異を唱える人が現れたとき、そのことを心地よく感じられないのは当然のことです。しかし、それは今まで会社が抱えていた課題を教えてくれ、変えるチャンスをくれているのかもしれません。そのような従業員の声にこそ積極的に耳を傾けて、ぜひその内容を吟味してみてください。
社会保険労務士法人アールワン 濵中 伸介(はまなかしんすけ)
お客様との「関係性」の構築を大切に考えています。私たちのやることが企業やそこで働く従業員の成長・発展に繋がるよう日々奮闘しています。趣味はランニングとミスチル、それとお酒を飲みながら人と会話をすることです。みなさん、よろしければお声掛けください!
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