退職日に勤務していると傷病手当金が受給できなくなる?会社が注意すべきポイントとは。
2018/05/20
こんにちは。東京都の社会保険労務士法人アールワンの高澤(たかさわ)です。
2014年の独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査によると、職場において「過去3年で精神的な不調を感じたことがある」という人は全体の4分の1を占めるそうです。また、それが理由で実際に会社を退職した人はそのうちの13.3%と決して小さくない数字となっています。
さて、このような業務外の傷病によって退職した人が受けられる社会給付について、会社側が注意しておかなければならないことがあります。それは、退職前における会社側の知識や本人へのお知らせが不十分であった場合、本人が受給できなくなってしまう可能性があるということです。
そこで、今回は退職後に受給できる「傷病手当金」と「失業手当」について、その注意点をお伝えします。
1.退職後にも傷病手当金を受給できる条件は?
ケガや病気によって、在職中から健康保険の傷病手当金を受給している方のうち「退職日の前に1年以上継続して健康保険に加入している」という場合には、退職後も傷病手当金を受給することが可能です。
※在職中であれば、1年以上の継続加入が無くても傷病手当金は受け取れます。
受給できる期間:傷病手当金が最初に支給されてから1年6か月が限度(在職中からの通算です)
受給できる金額:給与額面の約3分の2(非課税かつ社会保険料対象外です)
また、退職後に傷病手当金を受給するためには、さらに以下2つの要件もありますので、特に会社は注意が必要です。
■退職前に連続して4日間の欠勤があること
傷病手当金は傷病を理由に連続して4日間欠勤(有給休暇または所定休日でも可)した場合に、その4日目から支給されます。この4日目に在職中でないと「在職中に傷病手当金を受給していた」ということにならず、受給の対象となりません。そのため、連続した欠勤・有給休暇の日数を確認したうえで、退職後の傷病手当金の受給可否を伝えるようにしましょう。
■退職者が退職日に出勤していないこと
退職日に出勤して給与が払われた場合、退職日が傷病手当金の受給対象とならず、退職後に傷病手当金が受給できません。会社はこの点に注意して、退職予定者と最終出勤日を決定することが重要です。
※退職日が有給休暇の場合は、給与が支給されても問題ありません、
※退職手続(保険証返却等)を出勤とするか否かは、会社判断で問題ありません。
※引継・残務実施・業務書類整理などは業務にあたるため、出勤扱いとなります。
2.傷病での療養中には失業手当は受けられません
失業手当は「仕事を探している人」に支給される保険です。そのため、退職後に傷病で療養している期間中は失業手当を受給できません。傷病が治った後に失業手当が受給できない、ということにならないよう、退職前に会社から以下のポイントを伝えておくことが必要です。
①傷病退職の場合、すぐには失業手当を受給できないこと
②失業手当は原則として、「退職後1年以内」に受給する必要があること
③そのため、「1年以内に傷病が治る見込が無い」という場合や「1年以内にすべての失業手当を受給できない」という場合には、退職後早めにハローワークに「受給期間延長申請書」を提出して、受給期間を延長すること
④延長申請によって、「最大で退職後4年」まで失業手当を受給する期間を延長できること
今回の記事でお伝えしたとおり、傷病が理由で退職した人は、通常の自己都合退職であれば受けられる給付が受給できなかったり、あるいは「退職日が1日違うだけで給付の受給可否が変わってしまう」ということが起き得ます。
トラブルを避けるためにも、そして残念ながら会社を去ることになる方がその後少しでも安心して療養し、無事に社会復帰して頂けるようにするためにも、会社から本人への事前の伝達が重要となります。
社会保険労務士法人アールワン 高澤 留美子(たかさわるみこ)
社会保険労務士事務所を開設して、歳月がたちました。最初の事務所は自宅の子ども部屋でした。お客様と本音でつながっている「パートナー」になれるよう、日々研鑽しています。モットーは「人間万事塞翁が馬」です。
140社の人事労務をサポートする、東京都千代田区の社会保険労務士法人アールワンが提供。人事労務ご担当者の方の実務に役立つ情報をお届けします。
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