従業員の家族に介護が必要な人が出たときに、すぐに会社が確認すべきこと。
2018/07/20
こんにちは。東京都の社会保険労務士法人アールワンの濵中(はまなか)です。
さて、介護を理由とした離職を防止するために、2017年1月に育児介護休業法が改正されています。今後、介護を必要とする人は確実に増加し、それによって会社が従業員から「家族の介護が必要になった」という申出を受けることも珍しくなくなるでしょう。
そこで今回は、従業員からそのような申出があった場合に、会社として行うべき初期対応をお伝えします。
1. 介護が必要な家族の状況を確認します
①介護認定を取っているか?
対象の家族について、市区町村等の窓口での相談および「要介護認定」の申請を行っているかを確認します。対象の家族の方が介護保険に加入している場合に「要支援1~2/要介護1~5」の7段階のいずれかの認定を受けることで、介護サービスを原則1割の自己負担で利用することができるようになります。(また、育児介護休業法に規定されている介護休業や時間外労働の免除を申請できるかどうかも決まります)
もしも、まだ申請を行っていなければ、従業員がお住まいの市区町村の窓口に行くように案内をしましょう。要介護認定は申請日からおよそ30日以内で結果が出ます。申請を行えば、認定が出るまでの間も介護サービスを1割負担で利用することができます。
②介護サービスを利用するのか?
介護サービスを受けるためには、利用する介護サービスについての利用計画(ケアプラン)を作成して、市区町村に提出する必要があります。ケアプランは、介護施設に預けるのか、訪問介護のサービスを受けるのか、といった内容を相談したうえで介護支援専門員の資格を持つケアマネージャーが作成します。
上記の①「介護認定の有無」と②「介護サービス」の内容が決まることで、費用がどれくらいかかるのか(収入がどれくらい必要になるのか)、どういった働き方ができるのか(今までと変わらずフルタイムで働けるのか、労働時間を減らすのか)という目安ができ、それをもとに介護と仕事を両立するための具体的な働き方を従業員と検討していきます。
2.会社で利用できる制度を確認します
①育児介護休業法の制度の対象となるか?(介護休業の対象となるか)
育児介護休業法で定められている介護休業を利用できるかを確認します。制度利用の条件としては、<介護保険制度において「要介護2以上」の認定をされていること>または<厚生労働省の「育児・介護休業制度ガイドライン」の判断基準で一定の状態にあること>が条件となります。また、対象の家族は「配偶者、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹および孫」となります。
②介護休業を取得するか、働き方を変更するか?
介護制度の利用条件を満たしている場合は、介護休業(最大93日間)を取得するか、短時間勤務の制度を利用することとなります。これらは下表のように育児・介護休業法で定められており、会社が従業員から申請があった場合には必ず対応しなければいけません。
3.介護を行う従業員をサポートする福利厚生を検討します
上記の制度以外にも、介護が必要となった従業員に対して福利厚生制度を設ける会社もあります。下記はその一例です。
①民間保険の収入補償に会社で加入する
家族の介護を理由に従業員が休業した場合、会社からの給与支給がなくなります。その期間に介護休業給付金が最大93日間支給されますが、休業が長引いた場合には金銭的な不安が大きくなることも考えられます。そこで、あらかじめ会社として民間の保険に加入することで、介護のための休業期間に収入補償を行っている会社もあります。
②会社で復職するための計画を作成する
介護休業や時短勤務制度を利用する際に復職までのプランを作成し、支援をすることを就業規則に定めて、社内において周知します。そのことで従業員が復職しやすい環境を整備します。
③再雇用制度を設ける
従業員が介護を理由に退職をした場合、就業が可能になった段階で再雇用する制度を設けることで、介護離職による人材の流出を防止します。
上記の②③については、取組を行うことで会社に助成金が支給されます。
介護はその始まりも終わりも事前には分からず、一人ひとりの状況も異なるため、会社が事前に準備をしたり、定型の対応フローを作るというのは困難です。そのようななかでも求められるのは、今回の記事でお伝えしたような初期対応を的確に実施することです。
また、介護保険や育児・介護休業法といった公的な制度や法律はあるものの、従業員の介護への不安が無くなるわけではありません。その不安を少しでも取り除き、そして従業員の離職を防ぐためにも、会社の福利厚生としての介護サポートもぜひご検討ください。
社会保険労務士法人アールワン 濵中 伸介(はまなかしんすけ)
お客様との「関係性」の構築を大切に考えています。私たちのやることが企業やそこで働く従業員の成長・発展に繋がるよう日々奮闘しています。趣味はランニングとミスチル、それとお酒を飲みながら人と会話をすることです。みなさん、よろしければお声掛けください!
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