時間外労働の規制や有給取得の義務・・・「働き方改革関連法」が企業に求めることとは?
2018/08/20
こんにちは。東京都の社会保険労務士法人アールワンの濵中(はまなか)です。先日、熱海に旅行に行ってきましたが、見事に台風にぶつかってしまい、楽しみにしていた初島でのグランピングはできませんでした。来年は必ずリベンジします!
「働き方改革関連法」がついに2018年6月29日に参議院で可決・成立し、これから2019年4月より順次施行となります。この働き方改革は、今後、労働力人口が減っていくなかで、世の中が今と変わらない付加価値を生み出すことができる状況をつくることが目的とされています。
そこで今回は働き方改革関連法のなかでも労働基準法に焦点をあてて、その内容と、今後企業に求められる対応についてお伝えします。
1.時間外労働の上限規制《2019年4月1日施行(中小企業は2020年4月1日)》
時間外労働の上限について、現行では厚生労働省によって「1ヶ月45時間、1年360時間」という上限が定められています。ただし、特別の事情がある場合においては、この基準を超え「36協定で定めた時間の範囲で上限なく」時間外労働を行うことができました。
しかし、今回の改正後においては、この特別の事情がある場合に延長できる時間につき
①「1年間720時間未満」
②「1ヶ月100時間未満」
③「2ヶ月平均、3ヶ月平均・・・6ヶ月平均のいずれも月80時間未満」
④「45時間を超える月は、1年で6回以内」
の4点が制限となります。
注意が必要なのは、②と③については「休日労働した時間」も含まれるという点です(今までは法定休日に労働した時間は時間外労働には含まれませんでした)。
罰則も設けられていますので、企業としては今まで以上に厳格に労働時間の管理を行う必要があります。なお、この時間外労働の上限規制は、建設業や自動車運転業、医療業などについては当分の間、適用除外・猶予されることになっています。
2.時間外労働に対する割増賃金の見直し《2023年4月1日施行》
「1ヶ月の時間外労働60時間超に対する割増賃金50%の支払い義務」はこれまで中小企業への適用が猶予されていました。しかし、2023年4月からその猶予が廃止され、すべての企業が適用の対象となります。
これにより、月に60時間を超える時間外労働が発生している中小企業においては人件費の増加が予想されます。また、固定で60時間を超える時間外手当を支給している会社の場合、手当の見直しを行う必要があります。
3.有給休暇の確実な取得《2019年4月1日施行》
年間に10日以上有給休暇を付与される従業員は、付与された日から1年以内に5日分を必ず取得させなければならなくなります。ただし、従業員自らが有給休暇を取得した日や、会社が夏休みなどとして計画的に取得させた日については、この5日から控除することができます。
また、従業員の有給休暇の取得状況を確実に把握するために、企業には「年次有給休暇の管理簿」の作成が義務づけられます。しかし、企業が従業員の有給休暇の取得状況を把握したうえで消化状況におうじて個別に対応することは負担かつ非効率です。そこで考えられる対応としては、企業の年間予定として夏休みや冬休みなどをあらかじめ計画し、労使協定を締結することで、それを個人の有給休暇で取得してもらうという方法が考えられます。
今回の記事では主な3つを紹介しましたが、他にもフレックスタイム制における労働時間の精算期間を1ヶ月から3ヶ月に延長することや、労働時間や休日などの規定を適用除外とする「高度プロフェッショナル制度」の創設などが決まっています。
人手不足が深刻化する昨今、従業員一人あたりにかかる負担は大きくなっています。そしてそのような状況にありながらも、今回の働き方改革関連法案は労働時間の削減や時間外労働を規制する内容です。この状況を打開する方法として考えられるのは、今の業務のやり方を抜本的に見直すことだと考えられます。これまで当たり前のように行っていた業務であっても、「何のために行っているのか」「本当に必要なことなのか」という客観的な視点で改めて評価することで、少しでも労働効率を改善していく取り組みがどの企業にも今後求められるのではないでしょうか。
社会保険労務士法人アールワン 濵中 伸介(はまなかしんすけ)
お客様との「関係性」の構築を大切に考えています。私たちのやることが企業やそこで働く従業員の成長・発展に繋がるよう日々奮闘しています。趣味はランニングとミスチル、それとお酒を飲みながら人と会話をすることです。みなさん、よろしければお声掛けください!
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