アールワン日誌 Blog

従業員の死亡時に必要な社会保険の手続きと、給与計算の注意点をお伝えします。

2018/10/20

従業員の死亡時に必要な社会保険の手続きと、給与計算の注意点をお伝えします。 - 社会保険労務士法人アールワン | 東京都千代田区

こんにちは。東京都の社会保険労務士法人アールワンの笹沼(ささぬま)です。先日、タイのプーケットに旅行に行ってきました。海は青く透き通り、素晴らしい景観だったのですが、旅行中に熱と腹痛にやられて、ほぼ1日を寝て過ごすという状況がありました。ショッピングモールで探し回ったのはお土産やお酒ではなく、風邪薬と胃薬です・・・。

さて今回は、病気や突発的な事故などによって、自社の従業員が死亡してしまったという場合に会社に求められる対応をご紹介します。そのようなケースは会社にとってもショックであることは間違いありませんが、遺されたご家族への影響もふまえ、以下の一つひとつの対応を迅速に行っていくことが大切です。

 

企業の経営者・担当者さま

「もっと詳しく知りたい」「今この件で困っている」そのようなときには、こちらよりご連絡ください。

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1   社会保険、雇用保険関連の手続き

下記の②〜④はいずれも、協会けんぽや加入している健保組合への申請となります。

①資格喪失手続き(社会保険、雇用保険)

退職者の場合と同様、資格喪失手続きを行います。この場合は「死亡日=退職日」となります。

②埋葬料の申請

生計を維持(※)されていて、埋葬を行う家族が受け取ることができます。生計を維持されていた家族がいない場合には、実際に埋葬を行った方が受け取ることができます。
※同居しているか、または別居していても仕送り等をしていて、その亡くなった方の収入をメインとして生活していた人です(お子様や専業主婦の方など)。

③傷病手当金、高額療養費の申請

病気や怪我が原因で、病院等に入院したまま死亡した場合に、その間は労務不能であったと判断されれば、相続人(配偶者やお子様など)は傷病手当金を受け取ることができます。また、医療費が高額になった場合、高額療養費の申請ができます。この場合、申請者は相続人となりますので、相続人の振込口座を記載し、戸籍謄本等で従業員との続柄を証明する必要があります。

④未支給年金の請求

老齢年金を受け取っていた方の場合は、死亡に伴い、年金が支給停止となります。この場合、まだ受け取っていない年金や、亡くなった日より後に振込された年金のうち、亡くなった月分までの年金は「未支給年金」として従業員と生計を同じくしていた遺族が受け取ることができます(その場合、残りの金額は返金もしくは遺族年金と調整する場合もあります)。

 

②と③については、申請に際して会社の押印が必要となりますが、遺族が直接申請することもできます。しかし、遺族の方が社会保障の知識があるとは限らず、申請が漏れれば受け取ることができません。そのため、遺族に必要書類を案内したうえで、会社が申請を代行することをお勧めしています。

④も、会社と遺族のいずれからも申請が可能です。年金事務所でも案内をしてくれますので、会社からは「未支給年金の請求がありますので、年金事務所に相談してください」というお知らせにとどめることも考えられます。

 

2 従業員死亡後の給与支給について

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従業員死亡後に支払う給与がある場合、従業員本人の口座は凍結してしまうため、相続人の口座に振込をする必要があります。また、以下の点に注意が必要です。

①死亡後に支給する給与は所得税0円として計算する
死亡後に支給する給与は従業員本人の所得ではなく、相続人が受け取る財産となりますので、所得税は0円となります(所得税は課税されません)。

②年末調整を行い、源泉徴収票を発行する
死亡退職した場合、最終月の給与までで年末調整の計算を行います。ただし、死亡後に支払いが到来する給与については、所得税の対象ではありませんので、死亡前までに支給された給与額で年末調整の計算を行い、源泉徴収票を発行する必要があります。

例)月末締め翌月25日支給の会社で、10月15日に従業員が亡くなった場合

・10月25日、11月25日支給給与は相続財産となりますので、所得税はかかりません。
・9月25日に支給された給与額までで年末調整の計算を行います。計算の結果、還付金が発生する場合は、還付金も相続人に支払う必要があります。

 

 

従業員が死亡した場合、この他にもご家族とのやり取りや社内通知、お香典の手配など、会社がやるべきことは盛りだくさんです。いざというときに対応が漏れたり、遅れてしまうことが無いように、あらかじめ「どこに何をすべきか」のチェックリストを作成しておくとよいでしょう。

傷病手当金や埋葬料などは、受け取ることができる要件を満たしていても自動的に役所から請求書や制度の案内が届くわけではなく、ご自身で書類を準備して申請する必要があります。そのため、社会保障の制度を理解していなければ申請漏れが発生してしまいます。そのようなことが無いように、会社から遺族の方に制度についてご案内し、また申請のサポートをすることで、遺族の方にも安心いただけるのではないでしょうか。

 

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笹沼 瞬(ささぬましゅん)のイメージ

執筆者

社会保険労務士法人アールワン 笹沼 瞬(ささぬましゅん)
生命保険会社の営業職から転じて、入社13年目。担当クライアントの多くが社員100名以上の規模の会社様ということもあり、法改正の情報は特に早めにキャッチアップすることを心がけています。得意な分野の助成金・補助金申請はずいぶんと経験値が増えてきました。趣味でテニス(最近はインドアが多いです)をやっていますので、テニスやられる方はぜひお声かけください。