管理者だから残業代は不要?「管理監督者」の正しい定義にご注意を。
2018/12/10
こんにちは。東京都の社会保険労務士法人アールワンの笹沼(ささぬま)です。先日、趣味のテニスを久しぶりにしてきたものの、身体がついていかず思うようなプレーができませんでした。日々の運動の積み重ねが重要だと実感するこの頃です・・・。
昨今、未払い残業代の請求が増えてきています。その背景には長時間労働がありますが「課長以上に昇進したので残業代は出ない」「管理者は深夜に働いても休日に働いても残業代は発生しない」といったように「一定以上の役職者には残業代を支給しない」という誤った認識で運用している企業が多いことも大きな要因と考えられます。
そこで、今回は労働基準法における「管理監督者」の定義と割増賃金の発生についてお伝えします。
管理監督者の定義は?
労働基準法第41条第2号該当する人で
「部長や工場長など、労働条件の決定やその他労務管理について経営者と一体的な立場にある者。または経営企画室室長や各部長といった、人事制度を策定する役割の者など」
をいいます。
具体的には、次のような立場の人が管理・監督者になりえます。
①兼務役員
②支店長、事務所長などの事業の長
③経営者に直属する組織の長
④本部の課またはこれに準じる組織の長、次長、副部長等
⑤経営上の重要事項に関する企画立案等の業務を担当するスタッフ
⑥職務が経営者または監督もしくは管理の地位にある人
管理監督者の該当基準は?
しかし、たとえば「支店長」や「部長」という役職に就いているというだけで、無条件に管理監督者とみなされるわけではありません。会社における役職や名刺上で上記の①~⑥に該当しているというだけではなく、「職務・職責・勤務態様・待遇」といった下記の要件を(原則として)すべて満たしている必要があります。
□ 経営方針の決定に参画、または労務管理上の指揮権限を有しているか?
□ 出退勤について厳格な規制を受けず、自己の勤務時間について自由裁量を有する地位にあるか?
□ 待遇(賞与等)について一般労働者に比べて優遇措置が講じられているか?(※1)
□ 従業員の労務管理等について何らかの権限を与えられているか?
□ 人事等に決定権限があるか?(※2)
※1 実態として昇進前後でほとんど差異がない場合、管理監督者と認められません。
※2 人事に関与しても、独自の決定権を有するものではなく、上司を補佐し与えられた仕事をこなしていた域を出ないものであれば管理監督者とは認められません。
労働時間・休憩・休暇の適用範囲
管理監督者とみなされれば、下表のとおり、労働基準法において一般的な従業員に適用される各種事項の対象外となります。
注意しなければならないのは、管理監督者であっても深夜に勤務した場合は割増賃金を支払う必要があるということです。「管理監督者の労働時間は把握しなくてもよい」と認識している人が多いのですが、会社は管理監督者の健康管理上、労働時間を把握する必要があります。そのうえで深夜勤務をしている場合には割増賃金を支払わなければいけません。
そして、管理監督者に対しても有給休暇の権利は発生しますので、付与しないという運用をしていれば違法行為となります。
昨今、労働時間短縮や、労働時間に対して適切な残業代を支払うという企業は増えてきたものの、そのなかでも「管理者であれば、残業代の支給が必要ない」と考えている会社はまだ多くあります。会社で考える「管理者」は「部下を持ち、その組織を束ねる者」という位置づけであることが多いですが、労基法においてはさらに上の立場となる「経営に参画する者」という要件となっております。そこで労基法が定める管理監督者ではないと認められた場合には、多額の未払い残業代が発生するというリスクがあることを重く捉える必要があります。
労働時間管理は、多くの会社がすでに取り組み始めていることと思いますが、あわせて管理監督者の定義も再確認してみてはいかがでしょうか。
社会保険労務士法人アールワン 笹沼 瞬(ささぬましゅん)
生命保険会社の営業職から転じて、入社13年目。担当クライアントの多くが社員100名以上の規模の会社様ということもあり、法改正の情報は特に早めにキャッチアップすることを心がけています。得意な分野の助成金・補助金申請はずいぶんと経験値が増えてきました。趣味でテニス(最近はインドアが多いです)をやっていますので、テニスやられる方はぜひお声かけください。
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