社会保険は「国民の義務」、なんですけれども・・・。
2014/07/14
こんにちは。社会保険労務士法人アールワン代表の高澤です。最近はたいへんありがたいことに、お客さまからお菓子を頂戴することが非常に多く、糖分の摂取量がだんだん気になり始めております・・・(美味しいのでいっさい控えませんが!)。
さて、半年くらい前のことです。おつきあいのある税理士の先生から電話がなりました。
先生「社会保険料の滞納が1,600万円になっている関与先があるのですが、なんとかならないでしょうか?」
私「(・・・・・・汗) まずはそちらの会社さまに伺って、状況を確認させていただきます」
急いでその会社さまに向かって、話をいろいろと伺いました。
社保滞納時に社労士ができること
しかし、そこには「払いたいけど払えない」というきびしい経営状況があるだけでした。賃金の遅配も始まっていて、社会保険料だけではなく、法人税、消費税も滞納されていました。
そんな現実を前にすると、社会保険労務士ができることは限られてしまいます。「経理上計上されているが、実際はそのとおりに払われていない役員報酬」がある場合に、(最長2年間にさかのぼって)報酬額を実際の金額に訂正する「月額変更届」を出すことぐらいです。
しかし、これだけとはいえ、仮に月100万円の報酬額の減額があった場合(社会保険料の率を27%とすると)、月27万円、2年間だと648万円の滞納額が消えることになります。
もちろん、これをすると将来の年金額に少々の影響があります。しかし、このままでは差押さえがかかるかもしれないという、会社が死ぬか生きるかの時に、「何十年後の年金が減るかもしれないからそういうのは困る!」と言う経営者にお目にかかったことは一度もありません。
経営者とは、会社が終わったら自分の人生も終わりと考えている人たちだということを改めて感じさせられます。
15年前の忘れられない光景
そして、それとは逆に、年金事務所の徴収課に行くと決まって思い出す場面があります。
今をさること15年前、板橋社会保険事務所(その当時の名称です)の徴収課のテーブルで、社名入りのジャンパーを着た男性の方が
「すみませんが、今月はこれだけでなんとかお願いします」
と信用金庫の封筒を差し出されていました。
その姿には、「自分が作ってしまった現実を、時間がかかろうともどうにか解決していこう」とする経営者としての責任感が強く表れていました。
かたや隣の席で、書類を何枚か出すことで滞納額を消す手続きを行っている自分をつい省みてしまったものです。
「義務」だとは理解しつつ・・・
この仕事をしていてつくづく思うのですが、世の中の多くの会社は、よくこれだけの負担をしながら会社を継続しているものだと改めて感心してしまいます。会社の利益におかまいなく、毎月毎月、給与の約27%が口座振替されていく社会保険料。これに比べれば、利益が出た時のみ支払えばよい法人税のほうがよほど負担が軽い気がします。
厚生年金の保障は、老齢・死亡・障害。それでも、たとえ「死亡時に生活に困る遺族はもはやいません」と言ったとしても、「保険料は3割引き!」とは決してならないものですよね・・。
「国民の義務!」という言葉以外に、もっと納得して気もちよく払える言葉があればと思いつつ、今月も事務所の預金から引き落としされた社会保険料の額をしみじみと眺めてしまいました。
社会保険労務士法人アールワン 高澤 留美子(たかさわるみこ)
社会保険労務士事務所を開設して、歳月がたちました。最初の事務所は自宅の子ども部屋でした。お客様と本音でつながっている「パートナー」になれるよう、日々研鑽しています。モットーは「人間万事塞翁が馬」です。
140社の人事労務をサポートする、東京都千代田区の社会保険労務士法人アールワンが提供。人事労務ご担当者の方の実務に役立つ情報をお届けします。
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