健康診断実施後に行うべきこと
2019/07/20
こんにちは。東京都の社会保険労務士法人アールワンの黒木(くろき)です。毎年特に種まきをしなくても庭に朝顔の芽が出てきます。蔓が伸びてきたのでそろそろ綺麗に仕立て直そうと思っています。紫色の花が今から楽しみです。
新年度のスタートの4月、5月に定期健康診断を実施している会社は多いかと思います。実施後会社として何をしなければならないのかご存知でしょうか。社員に健康で長く就労してもらうために、今回は健康診断実施後に会社が行うべきことについてまとめました。
「健康診断の結果は金庫で大切に保管しています」
先日、顧問先で初めて人事担当となった方と電話で以下のようなやりとりがありました。
「社員の定期健康診断結果はそのまま保管しておけばいいですか?」
「そうですね、5年間は保管義務がありますよ。」
「わかりました。」
しばらくして訪問した際に健診結果の保管について確認したところ、そのお客様は
「病院から届いたものをそのまま金庫に保管しているから大丈夫です。」
「・・・・、社員の方へは結果はお渡ししましたか?」
「いいえ、人数分あるかどうかの確認はしましたけど、きちんと保管する以外に、何か他にもすることがあるのでしょうか?」
私が言葉足らずだった・・・と、反省しました。
「定期健康診断後に会社が行うべきこと」
定期健康診断を行った後は以下のことをします。
(1)各個人向けの健診結果は、ご本人に渡します。
(2)会社向けの結果は個人票に記載して5年間保管します。
(3)常時使用する労働者が50人以上いる事業所は、定期健康診断結果報告書を労働基準監督署へ提出します。
(4)「要所見」「要再検査」などの異常があれば、二次健診を受けてもらいます。
(5)会社はそのまま就労させてもよいかどうか、産業医などから意見を聴取し、就労判定を行います。就労判定には、①通常勤務が可能、②条件付きで勤務が可能、③すぐに休業、の3パターンがあります。
(6)就労判定に基づいた適切な措置を会社は実施します。これを行わないで本来は休業させるべき社員を就労させていると、安全配慮義務違反をとわれると共に、損害賠償の請求をされることもありえます。また、労働基準監督署の労働時間に関する調査では、必ず健康診断実施結果の記録を確認しています。個人票を作成していないと是正勧告が出される場合もあります。
「労災給付の対象となる二次健診の対象者は?」
二次健診については、労災保険制度に特別加入されている方及び既に脳血管疾患又は心臓疾患の症状を有している方は対象外ですが、「次の検査においてすべて異常の所見があると診断された場合」は労災から二次健康診断等給付が受けられます。
① 血圧検査
② 血中脂質検査
③ 血糖検査
④ 腹囲の検査又はBMI(肥満度)の測定
※二次健康診断等給付では、脳血管及び心臓の状態を把握するために必要な検査を行う二次健康診断とその結果に基づいて、脳・心臓疾患の予防のために行われる特定保健指導を、受診者の負担なく受けられます。
「産業医を選任しなくてもよい場合は?」
常時 50人以上の労働者を使用する事業場においては、会社は、産業医を選任し、労働者の健康管理等を行わせなければなりません。
言い換えれば、50人未満の事業場は産業医を選任していないところが多いと思います。本社では産業医を選任しているが、支店は数名なので産業医はいないような場合は、本社の産業医に支社の相談も出来るような包括的な契約にしておくと安心です。50人未満の会社は、地域産業保健センターで労働安全衛生法に定められた保健指導などの無料サービスを受けることができます。ぜひ活用してください。
会社は、「定期健康診断を受けさせた」だけで終わらせず、必ず結果についても適切な処置をしてください。
体調不良での退職の場合は、社内引継ぎが出来ない、新規採用したくても応募がなく今いる社員の負担が増え、退職の連鎖が起こるようなことがありえます。健康で長く就労してもらうことは、将来的に会社の利益となります。
社会保険労務士法人アールワン 黒木 知子(くろきともこ)
日ごろから社会保険の手続き業務が数多く発生するお客様を担当させていただき、これまで実にさまざまな手続きに携わってきました。そこで常に痛感しているのは、事前の準備とお客様へのご案内の大切さです。プライベートでは飼い猫に癒されながら、日々の活力を養っています。
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