労災認定を受けた場合。労働者が受取れる金額と会社が支払う可能性がある金額は?
2019/08/20
こんにちは。東京都の社会保険労務士法人アールワンの高澤(たかさわ)です。都バスの定額定期券というものがあることを知り、通勤用にさっそく購入しました。金額はジャスト1万円、有効期間は1カ月と4日間です。使わなくては損(元をとりたい)→バスがある時間に帰らなくては!→労働時間の短縮、につながっています。
労災保険は、業務上・通勤途上による労働者の傷病・障害・死亡等に対して保険給付を行うもので、公的保険の中で最も手厚い内容となっています。労災と認定されれば、医療費の自己負担はなく、休業に対する給付も、健康保険の場合はおおむね賃金額の3分の2ですが、労災なら約8割(特別支給金含む)となっています。この他、障害が残った場合、介護が必要となった場合の給付もあります。
今回は、労働者の死亡の場合を例として、労災の認定を受けた場合、受けられなかった場合における遺族への給付額の差をお伝えします。
例)Aさん 45歳。心疾患により自宅で倒れ死亡。遺族は妻42歳、子12歳。
ご遺族は、心疾患は長時間労働によるものとして労災の請求を行った。
Aさんの賃金額40万円、厚生年金に23年加入。(以下概算計算となります)
1 労災の認定を受けた場合 (月額)
2 労災の認定が受けられなかった場合 (月額)
1、2ともに子が18歳後において妻が再婚した場合、すべての支給はなくなります。
このように、労災認定の如何によって遺族が受け取れる額に大きな差が出ます。不支給の決定が出ても、それを不服として不支給の取り消しを求める行政訴訟が行われることはめずらしいことではありません。さらに遺族が企業側の安全配慮義務違反を不法行為として行う損害賠償請求は年々高額なものとなっています。
損害賠償額から政府労災保険金の控除は限定されています
労災保険から保険金が支払われた場合は、その額を損害賠償額から控除できますが、その際に控除できないものとして、将来に支払われる予定の労災保険金、慰謝料、特別支給金があります。
このため、ご本人またはご遺族から損害賠償請求が行われ企業側の安全配慮義務違反があった場合は、労災の認定を受けた場合であっても必ず企業側に多額の出費が生じることとなり、死亡・高度障害の場合は3,000万円から1億円のあいだとなっている場合が多く見られます。
行うべき安全配慮の内容は
① 健康診断の実施
1年以内ごとに1回(有害な業務や深夜業務を行う従業員は6ヶ月以内ごとに1回)、定期健康診断を実施し、健康を害している従業員がいないか、既往歴がある従業員の症状が悪化していないか等の健康管理が必要です。
② 安全衛生教育の実施と人員配置
危険な方法で業務を行わないよう従業員の安全に対する教育を行う必要があります。また、過重労働となっている部署や従業員がいないか、セクハラ・パワハラにあっている従業員はいないかを把握し、状況に応じた増員や従業員の配置転換等が必要です。
③ 従業員が使用する施設・機械等の安全の確保
会社内に危険な場所や物が置かれていないか、業務に使用する機械や道具に不具合な点や欠陥がないか、従業員が安全に働ける職場の環境管理を行う必要があります。
会社を守る対策のひとつとして
会社が安全に配慮する対応を行っていても、労災事故が起きないとは限りません。損害賠償請求による慰謝料や、安全配慮義務違反が認められた場合の会社が負う損害賠償金は多額となります。民間損害保険会社の任意労災保険(上乗せ労災)や使用者賠償責任保険に加入されるのも、会社を損害賠償リスクから守るための対策のひとつです。
社会保険労務士法人アールワン 高澤 留美子(たかさわるみこ)
社会保険労務士事務所を開設して、歳月がたちました。最初の事務所は自宅の子ども部屋でした。お客様と本音でつながっている「パートナー」になれるよう、日々研鑽しています。モットーは「人間万事塞翁が馬」です。
140社の人事労務をサポートする、東京都千代田区の社会保険労務士法人アールワンが提供。人事労務ご担当者の方の実務に役立つ情報をお届けします。
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