どこまでがOK? 採用の「試用期間」をめぐる3つのポイント。
2014/07/28
こんにちは。社会保険労務士法人アールワンの高澤(たかさわ)です。
さて、今回のテーマは「入社時における試用期間」です。
企業にとっても、働く人にとっても、人の「入社」というのはたいへん重要なイベントです。正式に入社してから、お互いに「やはりこの会社(この人)とは合わなかった・・・」となって後悔することがないように、多くの企業では入社後の一定期間を「試用期間」としています。
しかし、企業や働く人がこの「試用期間」を正しく理解していないことによって、「試用期間中の解雇」や「終了後の本採用可否」をめぐりトラブルが発生してしまうこともしばしばです。(当事務所もこれについては過去に多くのご相談をいただいています・・・)
今回はこのようなトラブルを回避するために、実際に当事務所にこれまで寄せられたご相談事例をもとに、おさえておきたい3つのポイントをご紹介します。
そもそも試用期間とは?
試用期間とは、新たな雇い入れに際し、従業員としての適性を判断するために設けられる一定の期間です。法的性質としては(やや難しい言い回しですが)「解約権保留付の労働契約期間」と解されています。
そのうえで、会社側が「試用期間中の解雇」や「試用期間満了後の本採用拒否」が認められるケースは主に下記のパターンです。
①試用期間中、職務的適格性に著しく欠けると判断した場合
②採否に関わる重大な経歴詐称等が発覚した場合
ただし、「本採用後の解雇」よりは広く認められているものの、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当と認められるものでなければ、試用期間中の解雇および本採用拒否は無効となります。
試用期間に関する3つのポイント
さて、それでは当事務所にこれまで多くご相談いただいた事例を元に、試用期間についておさえておきたい3つのポイントをお伝えします。
1:試用期間の延長はありえるか?
⇒事前に就業規則に定めてある必要があります。
就業規則に延長することがある旨を定めていれば、延長はありえます。ただし、労働者に不利益なことですので、延長の合理的な理由が必要となります。また、労働者に対して、「延長の理由」「延長期間」「本採用とならない場合の条件」などを事前に伝えておくことも大切です。
2:試用期間中の解雇はありえるか?また、解雇予告手当は発生するか?
⇒解雇には合理的な理由が必要です。手当が発生する場合もあります。
解雇はありえますが、「客観的に合理的な理由があり社会通念上相当であること」、そして「就業規則の解雇事由に該当していること」が必須ですので、就業規則に「通常の解雇」とは別に「試用期間中の解雇」について定めておく必要があります。解雇予告手当については、入社後14日を経過している場合は、通常の解雇と同様に30日以上前に予告をするか、解雇予告手当の支払い義務が発生します。
3:試用期間中の解雇と本採用後の解雇の違いは?
⇒試用期間中は、本採用後よりも解雇が認められるケースが多くなります。
試用期間中の解雇は、本採用後の解雇事由に該当する場合に加えて、重大な経歴詐称・健康不良・犯罪歴の発覚、著しい勤務態度不良や職務遂行能力不足の場合に行うことができます。
しかし、「態度不良や能力不足」においては、「再三の注意・指導をしたが、改善されなった」ということが前提となります。また、新卒採用者の場合は、指導教育を行うことが当然とされており、能力不足での解雇は非常に難しいと言えます。
反対に、管理職や専門職など特別な知識・経験を持っている前提で採用した者については、指導教育の状況は問わず能力不足による解雇が認められた判例もあります。
試用期間で大事なことは
会社側から見た場合、問題なく試用期間を終えて本採用となれば一番よいのですが、なかには「このまま本採用してよいのか・・・」と悩む場合もあるかと思います。
その場合には、
*早い段階で本人に改善してほしい点を伝えること
*しっかりと注意・指導を行うこと
*その記録を残しておくこと
以上の3点が重要です。試用期間とはいえ、その人を選んだ会社側としての責任をしっかりと果たしていきたいところですね。
社会保険労務士法人アールワン 高澤 留美子(たかさわるみこ)
社会保険労務士事務所を開設して、歳月がたちました。最初の事務所は自宅の子ども部屋でした。お客様と本音でつながっている「パートナー」になれるよう、日々研鑽しています。モットーは「人間万事塞翁が馬」です。
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