労災を使うと保険料は上がるのでしょうか?
2020/08/10
こんにちは。東京都の社会保険労務士法人アールワンの池田(いけだ)です。ついに梅雨明けし、夏本番がやってきました。外出時はマスクがはずせないため、熱中症に注意しています。
労災の書類を作成していた時、15年ほど前、仕事中に人差し指を切ってしまい、労災で病院にかかったことを思い出しました。その時は、会社へ報告をせずに病院に走っていったため、「何で勝手に病院行って労災にしてるの」と怒られました。当時の会社の担当者は労災を使う都度、保険料が上がるのだと思い込んでいたようでした。
そこで今回は労災を使うと保険料が本当に上がるのか?についてお伝えいたします。
確かに保険料が上がる場合もあります。
そもそも労災保険料率は、その業種の危険度によって決められています。しかし、同じ業種であっても、災害防止努力等により会社によって災害率に差が出ます。
そこで、労災保険制度では、それぞれの会社の保険料負担に不公平感が無いように、労災発生率に応じて保険料率を基本プラス、マイナス40%の範囲で増減させる制度を設けています。(この制度を「メリット制」と言います)
そのため、たしかに労災を使うと保険料が上がることもあります。
具体的にメリット制が適用される場合とは?
(1)労災に加入してから、3年以上経過していること。
(2)労働者を100人以上雇用している事業主。
(3)20人以上100人未満で「災害度係数」が0.4以上である場合。
災害度係数=労働者数×(業種ごとの労災保険率-非業務災害率0.6)≧0.4
例えば、「41食品製造業」のような、労災保険率1000分の6の業種においては、75人以上の労働者がいる場合に適用となります。
それでは、実際メリット制が適用となると、どれくらい保険料率(保険料)が変わるのか例でお伝えします。なお、通勤災害は、どれだけ使っても保険料率の増減に影響はありません。
例
卸売業・小売業・飲食店又は宿泊業
雇用している人数が100人 給与総額4億円(1人あたりの年間給与は400万円)
メリット制無しの場合の保険料
100人×400万円×1000分の(3.0-0.6)=96万円
過去3年間の労災事故無しでメリット制(マイナス40%)が適用された場合の保険料
100人×400万円×1000分の1.44=57万6千円
メリット制(マイナス40%)が適用されることにより38万4千円安くなります。
最後に
労災を使うと保険料が上がるというのは、雇用している人数が100人以上、もしくは20人以上100人未満を雇用していて「災害度係数」が0.4以上である場合です。これに該当していなければ、メリット制の適用がありませんので、保険料率(保険料)が上がることはありません。同時に労災を使わないからといって、下がることもないわけです。
保険料が上がることを気にして労災申請をしない場合、発生した事故の補償は会社が全額行うこととなります。せっかく保険料を払っているのですからもったいないことだと思います。
社会保険労務士法人アールワン 池田 和浩(いけだかずひろ)
入社3年目。これまで手続き業務等を中心に行ってきましたが、昨年より給与計算も行っています。知識と経験を蓄積し、お客様の役に立つべく日々奮闘しています。ここ2年ほどで増えてしまった体重が気になっており、今年はウォーキングと食生活の改善で8kg減量したいと思っています。
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