給与を下げる時、いくらまでなら問題ない?
2021/07/10
こんにちは。東京都の社会保険労務士法人アールワンの高澤(たかさわ)です。最近、食べたもので別格!!は、ふるさと納税の返礼品のカニです。事前に「明日が水揚げで、明後日の午後には届きます。都合はいいですか?」という電話がくるところから、楽しくなります。
「給与を下げたい人がいるのですが、限度は1割ですよね?」というご質問をいただくことがあります。「下げたい理由はどのようなことですか」とお話を伺うと、懲戒処分の減給や降格処分と人事評価の結果による場合など、やや混乱していると感じることがあります。
懲戒処分による減給
この場合は、労働基準法第91条において「一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。」と規定されています。これで計算した金額をお伝えすると、「えっ、これしか引けないの!?あんなに会社に迷惑をかけたのに」となることがほとんどです。
出勤停止による減給
懲戒処分の出勤停止が行われた場合、その期間中の賃金は支給されません。労務の提供が行われないため当然で、これは減給の制裁ではないため、労基法第91条の制限はかかりません。
降格に伴う減給
懲戒処分の降格が行われ、それにより基本給や手当が下がる場合も第91条の制限はありません。ただし、就業規則や賃金規程で職務等級ごとの賃金・役職手当等が予め設定されていることが必要です。
なお、懲戒処分を行う場合は、あらかじめ就業規則に懲戒の種別及び事由(こんな時はこんな処分をします)を定めておかなければなりません。そのため、就業規則のない会社で、「問題行為があったから、懲戒処分で給与を減らした」ということは成立しないのです。
さらに、規定があったとしても、行った懲戒処分が「懲戒権の濫用」となってしまわないよう、その原因となった行為が就業規則の懲戒事由に確実に該当するのか、という点も重要です。
評価制度の結果としての給与の減額
評価制度によって、給与が減額となることにはなんら制限・限度はありません。評価項目、賃金テーブルがあり、A評価がC評価になったら○円下がるということが定まっていて(もちろん逆の場合も)そのルールのもと、評価の結果月10万円下がったという場合に、限度額云々という議論にはなりません。もちろん、下げることを最初から目的とした意図的・恣意的な評価ではないという前提です。
労働基準法は、労働者の労働の量(時間)について規定はあるものの、労働の質について、何ら判断基準を持つものではありません。
単に、給与を下げるときの理屈付け、ということではなく、企業の本来の目標である、労働の質をあげて、働く人の稼ぐ力を増強して、会社が利益を上げていくために、企業の規模にかかわらず評価制度は必要であると改めて思います。法律の制限を受けず、経営者の考えを最も出せる領域です。
社会保険労務士法人アールワン 高澤 留美子(たかさわるみこ)
社会保険労務士事務所を開設して、歳月がたちました。最初の事務所は自宅の子ども部屋でした。お客様と本音でつながっている「パートナー」になれるよう、日々研鑽しています。モットーは「人間万事塞翁が馬」です。
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