「業務災害」?それとも「通勤災害」?労災申請は慎重に。
2014/08/11
こんにちは。社会保険労務士法人アールワンの西嶋(にしじま)です。石垣島への旅行を計画しておりますが、台風のことが常に心配です・・・。
今回のテーマは「労災の申請」です。もしも会社の従業員の方が怪我をした場合、それが「業務上や通勤途中」で発生したのであれば労災保険の申請が必要です。その際には2種類の手続きがあり、もしもその判断を誤ってしまうと怪我をした本人や会社に不利益が発生してしまうことがあります。
今回は労災申請における「業務災害」と「通勤災害」のそれぞれの特長をお伝えします。注意すべき点やまぎらわしい点もございますので、ぜひこの機会にそれぞれの違いをチェックしてみてください。
業務災害と通勤災害の違いと注意点
業務中での傷病であれば「業務災害」、会社への通勤中や帰宅中であれば「通勤災害」となります。それぞれの申請の違いは下記です。
<必要書類について>
【注意点】
*業務災害において「労働者死傷病報告」が提出されていないと「労災隠し」となります。その場合、会社への罰則や、最悪のケースでは書類送検となる可能性もありますので注意が必要です!
<休業(補償)給付の受給について>
「業務災害」「通勤災害」いずれについても、「労働者が4日以上休業し、賃金の支払いが無い」ということが支給条件となり、休業4日目から平均賃金の8割が支給されます。(「医師が労務不能と判断し、かつ休業し賃金を受けなかった期間」が支給期間です)
<事業主の負担について>
「業務災害」の場合
▽
休業の最初の3日間は、事業主に平均賃金の60%の休業補償義務があります。ただし、この休業補償は賃金ではないため、雇用保険・社会保険の対象とはならず、所得税も非課税となります。
「通勤災害」の場合
▽
事業主に補償の義務はありません。
このケースではどちらに該当する?
続いて、これまで当事務所にもご相談いただいたことがある「どちらに該当するのかがわかりづらい」事例です。正しい答えがすぐにわかりますでしょうか?
例1)出張先から帰宅するときに怪我をした場合は?
帰宅途中の怪我になりますので、「通勤災害」と間違われることが多くあります。しかし、出張中の場合は自宅を出てから、帰宅するまでの期間の全てが「業務中」となります。そのため、このケースは通勤災害ではなく「業務災害」となります。
例2)自動車通勤者が、朝出勤する際に、会社の駐車場で怪我をした場合は?
作業場にたどり着く前(業務開始時刻前)に怪我をしているため「通勤災害」と思われがちですが、事業場内での怪我になりますので「業務災害」になります。
例3)学生アルバイトが学校帰りに会社に向かう途中に怪我をした場合は?
会社に向かう途中の怪我となりますので「通勤災害」と思われがちですが、通勤災害は「住居から就業場所へ向かう途中の災害」となります。そのため、学校から直接会社に向かう場合は、通勤途中とみなされず、また業務中でもないため労災保険が適用されません。
労災保険は給付内容が充実しています。
今回ご紹介したケース、意外だと感じる答えもあったのではないでしょうか?そのぶん、思い込みで判断して、誤った対応をしてしまうリスクがあるといえます。
労災保険は、国が実施している保険制度の中でも最も保険料が安く、かつ「あらかじめ定められた支給期間がない」など給付内容も充実しています。不運な状況に見舞われてしまった従業員の方に不利益が発生しないよう、労災保険の請求には慎重かつ、早急に対応する必要があります。
まとめ
今回のトピックについて、会社が取り組むべきこと
「業務災害」と「通勤災害」の違いを正しく把握
労災保険のスピーディーな請求対応
業務災害の場合は必ず「労働者死傷病報告」を!
社会保険労務士法人アールワン 西嶋 一樹(にしじまかずき)
サッカーと水泳が好きな37歳です。担当しているクライアントのほとんどが100人未満の中小規模の会社様ですので、大企業とは異なるスタイルでの人事労務のリスクマネジメントに腐心しています。お客様の要望に迅速に対応できるよう、日々精進していきます。週末は家族と一緒に近所を散歩するなどしてリラックスして過ごしています。
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