脳・心臓疾患の労災認定が「20年」ぶりに改定されました
2021/12/10
こんにちは。社会保険労務士法人アールワンの濵中です。
過労死が社会問題となってしばらく経ちます。脳梗塞や心筋梗塞などを発症した労働者の労災認定基準が20年ぶりに改定されました。
今までの労災認定の基準は主に「労働時間」でした。しかし、今後はそれ以外にも様々な要素から総合的に判断されることになります。そこで今回は新たに追加された基準のポイントと、今後会社がとるべき対応についてお伝えします。
脳・心臓疾患の労災認定の新基準のポイント
ポイント1.長時間の過重業務の評価にあたり、労働時間と労働時間以外の負荷要因を総合評価して労災認定することを明確にしました
改正前の時間外労働の労災認定基準として、「発症前1か月におおむね100時間」または「発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月あたり80時間」という明確な基準がありました。しかし、今回の改正によりこれらの時間に達しなかった場合でも「これに近い時間外労働」を行った場合は労働時間以外の負荷要因の状況も考慮し判断される、ということが明確化されました。
ポイント2.長時間の過重業務、短期間の過重業務の労働時間以外の負荷要因を見直しました
今までも労働時間以外の要素として、「不規則な勤務」などの負荷要因は示されていましたが、今回の改正により以下の項目が追加されました。
①休日のない連続勤務
②勤務間インターバルが短い勤務
③事業場外における移動を伴う業務
ポイント3.短期間の過重業務、異常な出来事の業務と発症との関連性が強いと判断できる場合を明確化しました
【短期間の過重労働】
①発症直前から前日までの間に特に過度の長時間労働が認められる場合
②発症前おおむね1週間継続して、深夜時間帯に及ぶ時間外労働を行うなど過度の長時間労働が認められる場合
【異常な出来事】
①業務に関連した重大な人身事故や重大事故に直接関与した場合
②事故の発生に伴って著しい身体的、精神的負荷のかかる救助活動や事故処 理に携わった場合
③生命の危険を感じさせるような事故や対人トラブルを体験した場合
今回の改正をうけて、会社としてやるべきことは
対策1.労働時間管理の厳格化と基準の見直し
今まであった「1か月で100時間」「2か月ないし6か月の平均が80時間」という明確な基準がなくなります。改正後は「これに近い時間労働があった場合~」となっていますが、その具体的時間は示されていません。ただし、「おおむね45時間を超える時間外労働時間が長くなるほど、業務と発症の関連性が強まる」という基準は以前と変わりません。
明確な基準がなくなったため会社ごとに労働時間管理の上限を決めていく必要がありますが、ひとつの目安として「60時間~70時間」という基準が考えられます。その場合改正前と比較し10時間から20時間の時間外労働の削減が必要になるため、より厳格な労働時間管理や作業の見直しなどをする必要があります。
対策2.使用者賠償責任保険の加入
不規則勤務あるいは出張の多い業務、深夜業などは業務の性質上、避けようがないことも想定されます。夜間シフトの翌日の早朝シフトに入る、または医療従事者、警備等急を要する業務につくなど、休日のない連続勤務に該当します。
そのため、労災認定になってしまった場合のリスクを補償するための方法として、使用者賠償責任保険に加入しておくことをお勧めします。使用者賠償責任保険とは、業務上の傷病において、従業員から法律上の賠償責任を負った場合にカバーする保険です。
今回の改正により労災認定のハードルが下がり、会社のリスクが高まりました。労働時間などコントロールできることはしっかり管理し、避けようのない状況に対しては、民間保険や補償を使ったリスクヘッジを行い対策を立て、大切な会社と従業員を守りましょう。
社会保険労務士法人アールワン 濵中 伸介(はまなかしんすけ)
お客様との「関係性」の構築を大切に考えています。私たちのやることが企業やそこで働く従業員の成長・発展に繋がるよう日々奮闘しています。趣味はランニングとミスチル、それとお酒を飲みながら人と会話をすることです。みなさん、よろしければお声掛けください!
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