労働基準法と労災保険法における「労働時間」の定義の違いとは?!
2021/12/20
こんにちは。東京都の社会保険労務士法人アールワンの笹沼(ささぬま)です。先日、友人とテニスをしたのですが、開始1時間ほどで足がつってしまいました・・・。寒さもあったのですが、身体の衰えを実感しました。
お客様からの問い合わせで一番多いのが「労働時間」についてのご質問です。その中で、労働基準法における「労働時間」と労災保険法における「労働時間」の定義が混在している方が多く見受けられます。
そこで今回は労働基準法と労災保険法における「労働時間」の定義の違いについて、お伝えします。
「労働時間」の定義とは?
労働基準法における労働時間とは、「客観的にみて、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価できるか否かにより決まる」とされています。
一方、労災保険法においては、「業務に起因するかどうか」で判断されます。
事例
① 出張時の考え方は?
出張時において、自宅から出張先に向かう移動時間や出張先から自宅に帰る際の移動時間はどのように取り扱うのでしょうか。
【労働基準法】
出張時の労働時間については、移動時間は労働時間とみなされず、実際に出張先で業務に従事した時間のみが労働時間となります。ただし、事業所で出張の指示を受けた後に移動をする場合は、移動時間中の自由度を勘案し、使用者の指揮監督下にあるか否かにより労働時間となるか判断することになります。
【労災保険法】
出張先に向かう移動時間及び出張先から帰宅するまでの移動時間を含めて労働時間となります。(自宅を出て、自宅に帰るまで)。そのため、その間に発生した災害に対しては労災保険が適用となります(業務災害)。
② リモートワーク時の考え方は?
クライアント先から自宅に帰り業務をする場合の移動時間はどのように取り扱うのでしょうか。
【労働基準法】
「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」では「使用者が移動することを労働者に命ずることなく、単に労働者自らの都合により就業場所間を移動し、その自由利用が保障されているような時間」は労働時間とせず、休憩時間として取り扱うことが可能とされています。そのため、労働時間とみなすかどうかは、労使で決めることができます。
【労災保険法】
移動時間について合理的な経路及び方法で出社する途中であれば、通勤災害となり、労災保険が適用となります。
労働基準法の観点から労働時間を管理することは重要ですが、「労働基準法の労働時間に該当しない=労災が適用されない」と考えてしまうと労災の申請漏れが発生します。その場合、労働者の生活が保障されない(会社が金銭負担することになる)、労災隠しを指摘される等の事象が発生する可能性があります。
そのため、労働基準法と労災保険法の労働時間の定義の違いを整理しておく必要があります。
社会保険労務士法人アールワン 笹沼 瞬(ささぬましゅん)
生命保険会社の営業職から転じて、入社13年目。担当クライアントの多くが社員100名以上の規模の会社様ということもあり、法改正の情報は特に早めにキャッチアップすることを心がけています。得意な分野の助成金・補助金申請はずいぶんと経験値が増えてきました。趣味でテニス(最近はインドアが多いです)をやっていますので、テニスやられる方はぜひお声かけください。
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