天災時に慌てない為の労務管理
2022/09/30
こんにちは。東京都の社会保険労務士法人アールワンの佐々木(ささき)です。最近、熊野古道の天然水がとても甘くておいしいので、毎日1リットル以上飲んでいます。水を飲む事はダイエットにも良いらしいので、今後も継続したいと思います。
近年、異常気象による大雨、洪水、地震等日本各地で様々な災害が発生しています。最近では台風14号が発生し伊勢湾台風級の勢力といわれ、連日ニュースで報道されていました。そこで、今回は災害時の会社の対応についてお伝えしたいと思います。
1.従業員に無理に出勤させても良いの?
原則として、台風が接近、大雨洪水警報が出ている事を理由に従業員を出勤させてはならない法律はありません。しかし、台風が直撃しているにもかかわらず出社を命じ、通勤途中で従業員が、怪我、または死亡した場合には、安全配慮義務違反(労働契約法第5条)として、損害賠償請求をされてしまう可能性があります。
その為、会社独自で勤怠・出社の判断を決める必要がありますが、具体的にどのように決めたら良いのか迷われると思います。
2.出退勤に関するルール作りを
◆従業員を出勤させる基準は?
①公共交通機関を利用し通勤する従業員について
公共交通機関の運行状況で確認します。電車、バスが動いていないのであればそもそも出勤することは困難ですし、公共交通機関が運休するほどの甚大な被害が想定される状況においては、従業員への安全配慮義務を考慮しなくてはなりません。
②車、自転車、徒歩で通勤する従業員について
気象庁が発表する警報・注意報を基に判断します。「大雨・洪水・暴風」といった警報、特別警報級とされる場合は、「休業・時差出勤・在宅勤務」などを会社が決定し指示する事が大切です。
◆就業中に暴風や大雨洪水警報が発表された場合は?
まずは、安全に帰宅できる手段とルートが確保できるかの確認が必要です。やみくもに帰宅させても通勤災害につながることがありますので、事前に情報収集し、早めに従業員に周知する事が大切です。
3.出勤できなかった場合や早退した場合の給与はどうなる?
① 公共交通機関が運休し出社できなかった場合
労働基準法第26条に、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は休業期間中該当労働者に、その平均賃金の100 分の60 以上の手当を支払わなければならない」とあります。
天災により交通機関が運休し、出社できなかった場合の取り扱いはどうなるかというと「使用者の責に帰すべき事由」にはあたらない為、ノーワーク・ノーペイの原則により、給与の支払い義務は生じません。しかし会社の判断により、従業員へ休業を命じた場合は、「会社都合による休業」となり、休業期間中該当労働者に、その平均賃金の100 分の60 以上の手当(休業手当)を支払わなければなりません。
② 終業時刻前に帰宅する場合
就業中に暴風や大雨洪水警報が発表され、就業時刻前に帰宅する場合の取り扱いについて、こちらも①と同様の考え方となります。従業員の判断による場合、休業手当の支払い義務はないものと扱います。一方、会社の判断により早退を命じた場合は、「会社都合による休業」となるため、休業手当の支払い義務が生じます。
上記は法的な考え方となりますが、有給休暇取得の推奨や特別休暇として取り扱う等、欠勤・早退扱いをしない対応をとる会社もあります。
私自身も東北大震災の際に、帰宅できず会社に寝泊まりした事もあり、その時にとても不安な思いをしました。地元が宮城県の事もあり、知り合いの中には休職を余儀なくされ、途方にくれた時期もあったと聞きます。そんな中で会社ができる事は何か、天災の状況に応じて「休業・時差出勤・早退・在宅勤務」や「賃金の支払い」などの運用を予めマニュアル化し、もしもの時に備えておきましょう。
社会保険労務士法人アールワン 佐々木 真美(ささきまみ)
以前は旅行会社に勤務してりました。主に従業員100名前後の顧問先様を担当しており、お客様の様々なトラブルやお悩みに誠実に対応する事を心がけています。
カフェ巡りや自然が好きなので、休日はドライブを楽しんでいます。
140社の人事労務をサポートする、東京都千代田区の社会保険労務士法人アールワンが提供。人事労務ご担当者の方の実務に役立つ情報をお届けします。
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