従業員が業務中に熱中症になった場合、労災になりますか?
2023/05/30
こんにちは。東京都の社会保険労務士法人アールワンの赤井(あかい)です。先日、恵比寿で開催されていたハワイアンフェスに行ってきました。フラダンスのショーやハワイの雑貨や食べ物を売っている屋台が出ており、日本にいながらもハワイにいるような気分になれました。
東京都は、5月の時点で気温が30℃に迫る日があり、蒸し暑い夏の足音がすぐそこに聞こえてきました。夏になり、気温が高くなると心配されるのが、「熱中症」です。そこで今回は、もし仕事中に熱中症になってしまった時の、労災認定のポイントをお伝えします。
熱中症は、要件を満たせば労災認定されます!
労災認定は、「業務遂行性」と「業務起因性」がポイントです。
「業務遂行性」・・・業務を行う中で発生した傷病であること。
「業務起因性」・・・業務と傷病との因果関係が認められること。
上記の2つの要件を満たした上で、熱中症の診断が医師より下りれば、労災認定されます。
実際に弊社では、次のような熱中症の労災認定事例がありました。
【事例】
8月上旬、40代の従業員が、道路の清掃作業を行っていたところ、午前中に体調の違和感を感じたが、作業を継続。午後3時頃、汗が止まらなくなった。
息が上がりやすくなり、意識が朦朧としてきた為、病院を受診したところ、熱中症との診断を受けた。その日の最高気温は、36度であった。
「業務遂行性」〇
清掃作業中の出来事であったため、業務遂行性があったと認められます。
「業務起因性」〇
気温が36度という高温な環境下で作業していたので、熱中症との因果関係が認められます。⇒結果、労災として認められました。
仮に今回のケースがお昼休憩中に、炎天下で運動を行ったことで、熱中症にかかったのであれば労災認定はされません。
職場での熱中症のリスク
熱中症は毎年どのくらい労災認定されているのでしょうか。厚生労働省によれば、令和3年度の職場での熱中症による死亡者及び休業4日以上の疾病者の数は、561人となっています。(うち死亡者数は20人)
この数字は、熱中症で死亡された方と休業日数が4日以上の方のみなので、休業4日未満の方を含めると、熱中症の労災件数は、実際にはもっと多いのではないかと推測されます。実際に弊社でも毎年、数件の労災申請を行っています。特に建設業や製造業、運送業で熱中症が多く発生しています。
屋外だけでなく、屋内でも熱中症にかかるリスクがあるのは、注意したい点です。
熱中症を未然に防ぎましょう
会社には、従業員に対して安全配慮義務があります。水分と塩分補給を促したり、ファン付き作業服を購入したりと、対策方法はたくさんあります。また現場を管理監督する方に、熱中症の見分け方を教育しておくことで、従業員の方の異変を見逃さないようにすることも大切です。
労災が起こってからではなく、事前に熱中症を防ぐ対策を講じることが、会社を守ることに繋がります。暑さが本格化する前に、今一度熱中症のリスクについて考えてみましょう。
社会保険労務士法人アールワン 赤井 加奈絵(あかいかなえ)
服飾資材を扱う会社に勤務後、職場環境を整える仕事に興味を持ち、アールワンに入社しました。お客様に寄り添った課題解決をすることを心がけています。またアールワンの採用担当として、より良い採用活動ができるように試行錯誤中です。休日は、整体や銭湯に行き、心身ともにリフレッシュしています。
140社の人事労務をサポートする、東京都千代田区の社会保険労務士法人アールワンが提供。人事労務ご担当者の方の実務に役立つ情報をお届けします。
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