必ず備えておきたい!海外渡航中の従業員がもしも病気や怪我をしたら。
2014/08/25
こんにちは。社会保険労務士法人アールワンの笹沼(ささぬま)です。最近、玉ねぎを切ることに快感を覚えてきており、若干「自分は変わってるかも・・・」と思い始めている今日このごろです。
昨今では海外出張やプライベートの旅行など、海外へ出かけることが珍しくない時代となりました。しかし、渡航中の病気や怪我などに対して、「どのような保険給付があるかがわからない」という人事ご担当者の方も多いようです。
日常とは異なる場所だからこそ、トラブルは決して珍しいことではありません。そこで今回は、海外で起こった病気や怪我に対する保険給付についてお伝えします。
公的保険と民間保険の違い
どのようなシチュエーションで保険が適用されるか、まずは下記の表をご覧ください。
それでは概要を順番に説明いたします。
*現地調査や商談のために海外出張をする場合
海外で起こった病気や怪我に対しては国内での災害と同様に「労災保険」が適用されます。特別な手続き等は必要ありません。ただし、海外現地法人への出向や海外支店への転勤等の場合は対象となりませんので、ご注意ください。
また、海外出張期間中のプライベートな時間(観光目的の移動、食事中等)に起こった傷病に対しては、労災が適用となりませんのでご注意ください。
*プライベートの旅行の場合
業務外の旅行中における傷病に対しては、加入している「健康保険」から給付を受けることができます。
*社員旅行の場合
業務性の有無によって適用される保険制度が異なってきます。全員参加が義務付けられている社員旅行については「業務性がある」と認められ、「労災保険」が適用となりますが、任意参加の社員旅行については労災保険の適用とならず、健康保険が適用となります。
ちなみに、民間の海外旅行保険は業務中なのか私的な目的なのかは問わず、適用となります。また、社長や役員等、労災保険が適用とならない方の場合でも補償されます。
保険給付手続き時に注意すべきこと
労災保険・健康保険のどちらの場合も、海外で診療を受けた病院に全額自己負担で支払いを行い、帰国後、各保険制度に申請をします。
申請時には「診療内容明細書」「領収明細書」「領収書」「日本語での翻訳文」が必要となります(翻訳文は専門家に依頼しなくても内容が分かるものであれば構いません)。
健康保険の場合は後日、還付を受けることになりますが、以下でお伝えするように「必ずしも支払った金額の7割が払い戻しされるわけではない」という点に注意が必要です。
渡航先によって、支給金額にも影響が
<支給金額について>
①治療費は治療を受けた国によって異なりますが、療養費の額は日本国内での同様の病気や怪我をして治療を受けた場合を基準に決定されます。そのため、治療を受けた国の治療費が日本国内での治療費よりも高い場合、自己負担額が高くなります。
[例:実際の治療費が20,000円、日本国内で受けた場合の治療費が15,000円の場合]
還付される金額…15,000円×70%=10,500円
→自己負担額は 20,000円-10,500円=9,500円 (※ほぼ5割が自己負担)
(日本で受けた場合は15,000円×30%=4,500円となります)
②支給決定日の外国為替換算率(売レート)が適用となります。そのため治療費を受けた日より支給が決定した日の方が円高の場合、自己負担額が高くなります。
為替や医療費の相場といった、国単位の差異が金額に反映されるということです。この点はあらかじめ理解しておいたほうがよいでしょう。
さて、民間の海外旅行保険では
・病院受診時の通訳派遣の手配
・病院の照会・予約等のサービス
・病院での費用を保険会社から病院へ直接支払ってくれる(自己負担がかからない)
といった商品も各種揃っています。
任意参加の社員旅行で、従業員が怪我をした場合、労災の適用とはならず、健康保険の適用となります。もちろん、会社に対する責任義務はありません。しかし、会社で企画した旅行である以上は、従業員が安心して旅行に参加できるように、リスクに対する備えをしておくべきではないでしょうか。
ぜひ渡航前には公的保険と民間保険を組み合わせて、海外での傷病に備えてみてください!
社会保険労務士法人アールワン 笹沼 瞬(ささぬましゅん)
生命保険会社の営業職から転じて、入社13年目。担当クライアントの多くが社員100名以上の規模の会社様ということもあり、法改正の情報は特に早めにキャッチアップすることを心がけています。得意な分野の助成金・補助金申請はずいぶんと経験値が増えてきました。趣味でテニス(最近はインドアが多いです)をやっていますので、テニスやられる方はぜひお声かけください。
140社の人事労務をサポートする、東京都千代田区の社会保険労務士法人アールワンが提供。人事労務ご担当者の方の実務に役立つ情報をお届けします。
アールワン作成のお役立ちページ |
---|