従業員の給与引き上げ時(賃上げ)の注意事項とは?
2024/02/10
こんにちは。東京都の社会保険労務士法人アールワンの笹沼(ささぬま)です。最近、左肩から腕にかけてしびれを感じ、マッサージに行きました。原因は日々の姿勢の悪さだと指摘を受けました・・。そのため腰を深くかけて座る、背筋を伸ばして歩く等を意識しています。
最近の物価高や社員のモチベーション向上のために、社員の給与の引き上げ(以下、賃上げ)を検討している(もしくは実施済)会社が多いと感じています。2024年の春闘では5%以上の賃上げを要求することがうたわれており、その傾向はますます進みそうです。
ただ、賃上げは月給だけに影響するのではありません。他方面へも大きく影響します。そのため、賃上げ時の注意事項について、お伝えします。
割増賃金、賞与、退職金、社会保険料への影響
例:基本給を280,000円から300,000円にアップした場合(従業員数20人全員一律)
年間で「(300,000円-280,000円)×12か月×20人=4,800,000円」の人件費の増額となります。さらに以下の金額も増えることになります。
①割増賃金(月の平均所定労働時間160時間、月に20時間の時間外労働をした場合)
・280,000円÷160時間×1.25×20時間=43,750円
・300,000円÷160時間×1.25×20時間=46,875円
46,875円-43,750円=3,125円
※年間で「3,125円×12か月×20人=750,000円」の増額
②賞与(年間6月、12月で支給。給与の2か月分支給した場合)
(300,000円-280,000円)×2か月×20人=800,000円の増額
③退職金(退職時の給与×支給率で計算。支給率が10の社員が退職した場合)
・280,000円×10=2,800,000円
・300,000円×10=3,000,000円
3,000,000円-280,000円=200,000円の増額
④社会保険料(4月に賃上げした場合。協会けんぽ東京に加入と仮定。)
社会保険料は毎年4~6月の給与額をベースとし、決定されます。
45,180円-42,168円=3,012円
※年間で「3,012円×12か月×20人=722,880円」の増額
⑤雇用保険料
(300,000円-280,000円)×14か月(賞与含む)×20人×9.5/1000=53,200円
⑥労災保険料(料率3/1000の事業所と仮定)
(300,000円-280,000円)×14か月(賞与含む)×20人×3/1000=16,800円
※④、⑤、⑥の料率は2024年2月時点(金額は会社負担額)
年間トータルで人件費が7,342,880円増えることになります。
このように人件費が増えますが、それでも賃上げをするのは、「社員がうちの会社で働くことを誇りに思って欲しい」「社員の生活を豊かにしたい」という、社員に対する社長の強い想いがあります。
先日、お会いした社長が
「昨年、社員の給与を上げたら「会社の業績が良くないと聞いていたのに給与を上げてくれて本当にありがとうございます。これからも頑張ります!」と言ってきてくれた社員がいてさ。すごく嬉しかったから私ももっと頑張って社員に還元したい気持ちになったよ。」
と、満面の笑顔でおっしゃっていたことがとても印象的でした。
単に賃上げをするだけでなく、社長は「何のために賃上げをするのか」の想いを社員に伝え、社員はその想いを受け取り会社に貢献する、という関係性を構築するために、アールワンとしてもお役に立ちたいと感じた出来事でした。従業員の賃上げを検討している、といった場合は、ぜひアールワンにご相談ください。
社会保険労務士法人アールワン 笹沼 瞬(ささぬましゅん)
生命保険会社の営業職から転じて、入社13年目。担当クライアントの多くが社員100名以上の規模の会社様ということもあり、法改正の情報は特に早めにキャッチアップすることを心がけています。得意な分野の助成金・補助金申請はずいぶんと経験値が増えてきました。趣味でテニス(最近はインドアが多いです)をやっていますので、テニスやられる方はぜひお声かけください。
140社の人事労務をサポートする、東京都千代田区の社会保険労務士法人アールワンが提供。人事労務ご担当者の方の実務に役立つ情報をお届けします。
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