えっ、パートやアルバイトも?平成28年より社会保険が適用拡大となります。
2014/09/01
こんにちは。社会保険労務士法人アールワンの高澤(たかさわ)です。
やや前の話となりますが、平成24年8月10日に年金機能強化法が成立しているのはご存知でしょうか?これによって、「短時間労働者に対する社会保険の適用拡大」が平成28年10月より施行されます。これはその名のとおり、「パートやアルバイトなどの短時間労働者であっても、社会保険加入義務が発生する」ということです。
経営に大きな影響が発生しそうな制度ですが、施行時点では、現行制度において被保険者数が「501人以上」の事業所が対象です。しかし、ゆくゆくは中小企業までその対象が拡大されることが予測されています。
そこで今回のテーマは、施行時点での適用拡大のルールについてです。どのような規模の会社の方であっても、ぜひ一度ご確認ください。
適用拡大の対象となる事業所は?
「現行の適用基準で適用となる被保険者数が501人以上」の事業所が対象となります。
(全従業員数ではなく、「現行の適用基準」で適用となる被保険者数によります。)
◇例1:飲食チェーン店経営 A社の場合
正社員 200人&パート従業員 400人
<パート従業員は全員週30時間未満のため、現行制度で適用対象外>
⇒ 現行の適用対象者は200人(正社員200人)
>>「適用拡大の対象外」です。
◇例2:派遣会社 B社の場合
正社員 200人&派遣社員 400人
<派遣社員のうち350人は、週30時間以上勤務のため、現在社会保険に加入>
⇒ 現行の適用対象者は550人(正社員200人+派遣社員350人)
>>「適用拡大の対象」となります。
A社とB社はともに全従業員数600人ですが、「現行の制度において適用対象となっている人数」が異なるため、A社は適用拡大の対象とはならず、一方B社は適用拡大の対象となります。
※もしも、途中で適用拡大の対象事業所に該当しなくなった場合は?
▽
適用拡大の対象事業所において、労働者数の減少により(平成28年9月以前の適用基準で)被保険者となる人数が501人未満になったとしても、「自動的に対象外」とはなりません。
対象外事業所となるためには、被保険者の4分の3以上の同意を得て、厚生労働大臣に申し出をする必要があります。
501人未満の事業所への適用はどうなる?
適用対象となる事業所の範囲拡大については、現在のところ未定ですが、「平成31年9月30日までに検討を加え、その結果に基づき必要な措置を講ずる」とされています。
これにより、平成31年10月以降、中小企業も適用拡大の対象となる可能性があります。
適用拡大の対象となる短時間労働者とは?
「労働時間および日数が一般の従業員の概ね4分の3(=概ね週30時間)以上」である短時間労働者は、現行の制度でも社会保険の適用対象となっていますが、平成28年10月以降、新たに以下の適用対象者が追加されます。
<平成28年10月以降、追加される適用対象者>
「適用拡大となる対象事業所」において、以下のすべてに該当する従業員
◇1週間の所定労働時間が20時間以上の者
◇月額賃金が88,000円以上の者
◇1年以上の雇用見込みがある者
◇学生ではない者
適用拡大の対象については、誤解を招く情報も多く、単に「501人以上の従業員がいれば対象」だと誤解をしているケースが見受けられます。会社としては、正しく適用対象を理解し、従業員から質問があった場合に備える必要があります。
また、週の所定労働時間が20時間の短時間労働者まで社会保険の適用範囲が拡大することは、企業だけでなく、短時間労働者にとっても大きな問題となります。「勤務時間を減らしたい・増やしたい」といった要望が労働者から出てくるはずです。そのような要望への対処も、今後各企業が苦慮するところでしょう。
今回の施行ですぐに適用対象とならない企業であっても、このトピックと無縁ではいられません。今後自社においてパート・アルバイト労働者をどのように活用していくべきか、改めてその方針を検討しておく必要があるといえます。
まとめ
今回のトピックについて、会社が取り組むべきこと
対象となる従業員の把握
短時間労働者からの要望への対応
パート・アルバイトの今後の労務環境の見直し
社会保険労務士法人アールワン 高澤 留美子(たかさわるみこ)
社会保険労務士事務所を開設して、歳月がたちました。最初の事務所は自宅の子ども部屋でした。お客様と本音でつながっている「パートナー」になれるよう、日々研鑽しています。モットーは「人間万事塞翁が馬」です。
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