どう対応する? 従業員が訴えるパワハラ事案
2024/04/30
こんにちは。東京都の社会保険労務士法人アールワンの中村(なかむら)です。4月中旬のある日、職場近くの皇居お堀沿いの公園で昼休憩を過ごしました。葉桜になりつつありましたが、風が吹くと花びらが舞い風情があるランチタイムでした。
今回は、従業員(相談者)から「パワハラを受けている」と相談がきたときの対応方法をお伝えします。
【相談者に対して】中立の立場で具体的事実を確認し、調査開始の了承を得る
基本的には、相談者からのハラスメントの訴えは、内部・外部の相談窓口で対応します。
相談者には、守秘義務があること、行為者からの報復は会社が認めないこと、相談したことによる不利益な取扱いはないことを伝えます。ここで重要なのが、事実確認が終わるまではパワハラだと断言しないことです。初期対応する部門(相談窓口)は、あくまでも訴えをきく役割で、事実の認定は行いません。このことは、相談者にもしっかり伝える必要があります。
聴取時は、行為者の問題とされる言動について
・いつ、どこで、どういう言動があったのか?(5W1H)
・期間、回数は?
・目撃者など事実を知っている人はいるか?(客観的証拠)
・どのような解決を望むのか?(ここが肝心)
などを確認し、確認調査を開始することへの了承を取ります。
相談者が調査に及び腰になっていれば、会社の安全配慮義務や、別の被害者が生まれる可能性があることを説明し了承を取ります。相談者が匿名を希望する場合は、事実確認するためには名前を伝えていただく必要があることを丁寧に説明し了承を取ります。
【行為者に対して】犯人扱いせず中立の立場で事実の経緯を確認し、言い分も聴く
相談窓口からの報告を受けて、以降は、社内のハラスメント対応部門が対応します。
行為者との面談に進む前に、相談者が主張するハラスメント言動を具体的に特定しておきます。パワハラ相談の多くは、指導時の「態度」「振る舞い」「言い方」に対して精神的攻撃を受けたとされるものです。大声や能力否定などの明確なパワハラ言動ではないからと「不問」にしたり放置したりせず、相談者が主張する内容を確認します。
行為者には、面談に応じてくれたことへの感謝と共に、守秘義務があること、行為者を追及する場ではないことを伝えます。そのうえで
・現時点では有無を認定していないこと
・包み隠さず、真実を述べてもらいたいこと
・犯人探し、口裏合わせ、報復の類は行わないでいただきたいこと
を説明し、相談者が主張する内容は事実かどうかを確認します。中立の立場を保つために、「一般的な労働者はどう感じるか」という視点も頭の中に入れておきます。
言い逃れや、どちらが悪いかというやり取りが続いたときは「事実を確認する必要があるので」と、話を戻して事実を確認します。行為者にも言い分がありますので、事実確認とは別に、酌むべき事情や弁明も聴取します。相談者の話と食い違う部分があれば、事実を知っていると思われる第三者にも話を聴き整合を取ります。
「事実に見合った処分」が「従業員の能力を発揮できる職場」に変わる
調査開始から、できれば1週間くらいで事実認定まで進めます。収集した証拠を前提に、相談者と行為者の関係、行為の状況や背景、第三者から聴いた内容などを総合的に検証します。厚労省が掲げるハラスメントの概念に照らして判断し、貴社の就業規則に沿って対処します。
問題になるのは、行為者が業績貢献者であり、ハラスメント対応部門が事実認定をしても、取締役会などで軽い処分が下るケースです。会社には難しい決断ですが、事実に見合った処分にすることで、従業員が安心して働け、能力を発揮できる職場環境に変えられます。
行為者の言動がパワハラに該当すれば、「互いにリスペクトし合う」ことが求められる現代の価値観にはそぐいません。例え指導が本質を突いていたとしても、言い方が強ければ精神的攻撃になりますのでやめてもらうよう伝えます。ハラスメントがあったと認定できない場合は、上司には指導の仕方を、部下には自分の態度を振り返る機会を設け、行動改善を促します。
弊社では、行為者が、問題となる行為の根本的な原因を解決し、引き続き職場で活躍していただくための「支援メニュー」もご用意しています。ハラスメントに関するお困り事があればお問い合わせください。
社会保険労務士法人アールワン 中村 智子(なかむらともこ)
電機メーカーに2社勤務後、ハローワークで人材確保・社員定着を支援していました。
キャリアコンサルタント、産業カウンセラー、メンタルヘルス関連の資格も取得しています。弊社のメンタルヘルス・ハラスメント・コミュニケーション研修を担当しており、社員の皆様が「活き活き働ける職場」を共につくりたく思います。一念発起し、禁酒ダイエット中です。
140社の人事労務をサポートする、東京都千代田区の社会保険労務士法人アールワンが提供。人事労務ご担当者の方の実務に役立つ情報をお届けします。
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