会社と社員の将来のために、復職許可は慎重に
2024/07/10
こんにちは。東京都の社会保険労務士法人アールワンの中村(なかむら)です。先日、職場近くの皇居お堀沿いの公園で昼休憩を過ごしていたときに、私の足の間を、黒と黄色の縞模様の蛇が這っていきました。目にした瞬間は凍り付きましたが、蛇との遭遇は縁起が良いそうです。来月の社労士試験まで運気が続くことを願うばかりです。
先日、お客様から
「メンタルヘルスで休職していた社員が休職期間満了直前に復職したが、体調不良で職務が遂行できていない」
という相談を受けました。体調不良の要因は「復職タイミングが早かった」ことも1つだと思われます。今回は、社員の活動性に応じて、適切な時期に復職させるための対策をお伝えします。
下表はメンタルヘルス疾患に関する調査結果です。この数値から「繰り返すたびに再発率は高まる」けれども「休業し、回復すれば復職はできる」ことがわかります。
※「Kessing LV et al. Recurrence in affective disorder. l. Case register study. Br J Psychiatry. 1998;172:23-8.」の調査結果をもとにした解釈
※「西浦千尋ら、民間企業における長期疾病休業の発生率、復職率、退職率の記述疫学研究、財団法人産業医学振興財団 平成27年度調査研究助成報告書p53-64 2015.」の調査結果をもとにした解釈
【復職日延期を選択肢に入れた対策】休業・復職の基準をつくり、就業規則に記載する
これまで不通だった社員から突然連絡があり、休業中の状況がわからないまま当該者の希望どおり復職させたという話はよく聞きます。しかし、当該者が言う「日常生活が送れている」は、必ずしも「職務遂行可能レベル」を満たせるとは限りません。このようなケースで当該者が体調不良を起こすのは「復職基準レベルが共有されていない」からです。
そのため、休職中の当該者の状況把握と復職基準共有のために
・定期的な「診断書の提出」
・電話などでの「月1回の連絡」
・復職基準は「職位相当業務が遂行可能であることが見込まれる」
をルールとして伝え、就業規則にも記載することをお勧めします。
規則に記載する理由は、仮に復職を許可できなかった場合でも、当該者に伝えやすく理解が得られやすいからです。
【再休業を指示しやすくするための対策】復職条件を設け、守れなければ就業は認めない
パフォーマンス低下は、疾患1回目で70~80%、疾患2回目では50%まで下がり、バリバリ働いていたころの100%には戻りません。
復職タイミングが早ければ、当該者の体調は仕事ができる状態まで回復しておらず、さらに体調を悪化させるリスクがあります。復職時期は「今後5年間、勤務が継続できるか」という視点で判断します。会社には安全配慮義務があり、「出社するだけで精一杯」であれば、当該者の将来のためにも休業し体調を立て直してもらうよう説明しなくてはなりません。
そのため、復職基準をより具体的に
・連日、定時の範囲で職位相当の仕事ができること
・遅刻や休業が月2回以上発生した時点で休業すること
といった「条件」として設定し、復職時に伝えておくことをお勧めします。
条件が守られなければ、ただちに
・会社が求める「職位相当レベル」
・ノーワーク・ノーペイの原則
・「疾病は高確率で再発する」というデータもあるので、将来のためにも体調が戻るまでじっくり療養してほしいこと
を、丁寧に伝え、以後の就業は認めない姿勢を示す必要があります。
アールワンでは、メンタルヘルス不調者への対応、周囲と軋轢を生じさせない職場環境づくりなどの相談も承っています。お困り事があればお問い合わせください。
社会保険労務士法人アールワン 中村 智子(なかむらともこ)
電機メーカーに2社勤務後、ハローワークで人材確保・社員定着を支援していました。
キャリアコンサルタント、産業カウンセラー、メンタルヘルス関連の資格も取得しています。弊社のメンタルヘルス・ハラスメント・コミュニケーション研修を担当しており、社員の皆様が「活き活き働ける職場」を共につくりたく思います。一念発起し、禁酒ダイエット中です。
140社の人事労務をサポートする、東京都千代田区の社会保険労務士法人アールワンが提供。人事労務ご担当者の方の実務に役立つ情報をお届けします。
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