間違えると大変です!変形・みなし労働時間制の誤った運用例。
2014/09/08
こんにちは。社会保険労務士法人アールワンの濵中(はまなか)です。最近読んだ本のおすすめは「嫌われる勇気」です。いわゆる自己啓発本ですが、いままでのものとは一味違う内容になっていますので、ご興味がある方は是非ご一読ください!
さて、みなさまの会社では変形労働時間制やみなし労働時間制を導入していますか?
導入してはいるものの、制度が正しく理解されず誤った解釈のままで運用されている、というケースは決して珍しくありません。会社にとっての深刻なリスクを生まないためにも、そのような誤った運用は、早めに是正する必要があります。
ではどのような点で誤解が生まれやすいのでしょうか?今回は「変形労働時間制」「フレックスタイム制」「裁量労働制」の3つの制度にわけて説明いたします。
「1ヶ月単位の変形労働時間制」
>>【1ヶ月以内の期間を定めて、1週間あたりの平均労働時間が40時間を超えない範囲で各日の労働時間を定めた場合、特定された日については法定労働時間(8時間)を超えて労働させることができる制度】
導入ケースが多い職種: 飲食業、小売業、病院 など
▼誤った運用例▼
勤務シフト表による1ヶ月単位の変形労働時間制を採用しており、1日の所定労働時間は8時間。ある日に10時間の勤務を行ったため、次の日にその2時間分の調整として6時間の勤務とした。その月の総労働時間は所定労働時間内に収まっているため割増賃金の支払いをしなかった。
→ このケースの場合、2時間分の割増賃金(+25%)の支払いが必要になります!
1ヶ月単位の変形労働時間制において、所定労働時間を8時間と定めた場合には、8時間を超えた時間は割増賃金の対象となります。あらかじめ(1週間あたりの平均労働時間が40時間を超えない範囲で)ある日の労働時間を10時間として勤務シフト表に定めていれば、割増賃金の支払いは必要ありません。
「フレックスタイム制」
>>【1ヶ月以内の一定期間の総労働時間を定め、各日の始業及び終業の時刻を労働者の裁量によって決めることのできる制度】
導入ケースが多い職種: IT関連業、デザイン業 など
▼誤った運用例▼
フレックスタイム制を採用しているが、毎日朝のミーティングがあるため、始業時刻については午前9時と定め、終業時刻については従業員の裁量に任せている。
→ フレックス制において始業時刻を会社が指定することはできません!
フレックス制で会社が指定できることはあくまで一定期間における総労働時間であり、その始業及び終業の時刻については従業員の裁量にまかせなければなりません。
「専門業務型裁量労働制」
>>【会社が業務の遂行手段や時間配分の決定等について具体的な指示をすることができない一定の専門業務について、あらかじめ定めた時間を労働したものとみなす制度】
導入ケースが多い職種:IT関連業、出版業 など
▼誤った運用例▼
専門業務型裁量労働制の対象としている従業員に対して、半日単位での有給休暇の取得を認めていた。
→ 休暇はすべて1日単位となります!
半日単位や時間単位での休暇という考え方は、裁量労働制対象者にはあてはまりません。1日の勤務時間が何時間であろうと、労使協定で定めた時間を労働したとみなすのが裁量労働制です。例えば協定で定めた時間が8時間の場合、10時間の労働でも8時間(1日)とみなしますが、逆に1時間の労働であっても8時間(1日)とみなす必要があります。
自由な働き方、ではありません。
変形労働時間制、みなし労働時間制は原則的な労働時間制(1日8時間、1週40時間)と異なり、特定の職種や条件に該当する人のためにより効率的な就業スタイルを実現する制度です。
ただし、誤った運用をした場合には、未払い賃金が発生したり、社員のかたの不信感を生み出すケースもあり、十分な知識が無いなかでの導入は禁物です。
「自由で柔軟な働き方」というイメージがあるとはいえ、ついつい制度の運用ルールまで「柔軟」にとらえてしまい、会社の都合のよいように運用しない注意が必要です。
社会保険労務士法人アールワン 濵中 伸介(はまなかしんすけ)
お客様との「関係性」の構築を大切に考えています。私たちのやることが企業やそこで働く従業員の成長・発展に繋がるよう日々奮闘しています。趣味はランニングとミスチル、それとお酒を飲みながら人と会話をすることです。みなさん、よろしければお声掛けください!
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