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どこからが「強要」になってしまうのか?「退職勧奨」の3つの注意点。

2014/11/17

どこからが「強要」になってしまうのか?「退職勧奨」の3つの注意点。 - 社会保険労務士法人アールワン | 東京都千代田区

こんにちは。社会保険労務士法人アールワンの濵中(はまなか)です。最近、遅ればせながら「永遠の0」を読んで号泣してしまいました・・・。次はDVDを観ようと思っています。

会社の業績が悪化した場合や、あるいは従業員の素行不良などの理由により、会社として特定の従業員に退職してもらわなければならない、といった状況は残念ながらありえます。その場合、解雇ではなく「退職勧奨」という方法があることは比較的知られています。

しかし、その方法を一歩間違えるだけで、その退職勧奨が無効になってしまうことはご存知ですか?しかも、それだけではなく、脅迫や名誉棄損行為として、慰謝料を請求されてしまうことさえもあるのです。

そのような事態を起こさないために、今回は退職勧奨の注意点や、関連する判例をお伝えします。

 

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そもそも「退職勧奨」とは?

退職勧奨とは、会社から退職についての動機づけを行うことで、「従業員のほうから退職の意思表示をしてもらう」行為のことです。

(動機づけの例としては「○○さんの評価は残念ながら当社では良いものではないので、他社でもっと能力を活かしてみてはどうですか?」などがあります。あくまで一例です)

もしも「退職勧奨」ではなく、会社からの一方的な労働契約の解消にあたる「解雇」であった場合は、その法的な有効性は厳しく判断されます。その際には、解雇の必要性や合理性、解雇を回避しようとした会社としての努力が必須です。

しかし、「退職勧奨」はあくまで従業員の自発的な退職を促す行為です。その方法を間違わなければ、解雇のように法律的な制限を受けることはありません。

 

退職勧奨を行う際の注意点は

しかし、退職の「強要」と「勧奨」のあいだに明確な線引きをすることは難しいように思えます。法的に退職勧奨とみなされるためには、会社側は下記のポイントをおさえておく必要があります。

 

①「面談は1人または2人で実施し、時間は30分程度までとする」

必要以上の人数や長時間の面談は、退職の強要や脅迫となり、不法行為とみなされる可能性があります。

 

②「回数制限は無いものの、内容は慎重に」

もしも最初の話し合いで退職の合意に至らなかった場合、退職勧奨は何度でも行うことができるのでしょうか?

これについては実際に次のような判例があります。

<判例>
業績評価制度の結果などを理由に、「複数回」の退職勧奨を受けた従業員4名が、会社に対して「脅迫的な内容で人権侵害を受けた」として、1人300万円の慰謝料の請求を行った。

【判決】
退職勧奨の対象となった社員がこれに消極的な意思を表明した場合であっても、それをもって、被告は直ちに退職勧奨のための説明ないし説得活動を終了しなければならないものでなく、(中略)退職勧奨に応ずるか否かにつき再検討を求めたり、翻意を促したりすることは、社会通念上相当と認められる範囲を逸脱した様態でなされたものでない限り、当然に許容されるものと解するのが相当である。
(東京地裁 平成23年12月28日)

上記判決はすなわち「社員が退職に消極的であっても、会社は退職勧奨を繰り返してもかまわない」という主旨になります。

つまり「勧奨の回数の制限は無い」ということです。しかし、もちろん、それが強要や脅迫でなく、会社に残ることと退職することのメリット、デメリットを客観的に説明し、話し合いをする場であると判断される場合に限ります。

 

③「退職届をもらうこと」

退職合意に至った場合は、「退職勧奨に合意しての離職」であることを記載した退職届を従業員から提出してもらう必要があります。また、退職勧奨による退職の場合は、退職事由は必ず「会社都合」となります。

※その際に、(助成金を受けることができなくなる、などの理由で)退職事由を「自己都合」とした退職届を強要してはいけません!

 

従業員の環境や立場を尊重することが重要です

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ここまでの説明は、退職勧奨についての法律的な考え方です。しかし、実際に退職勧奨を受けた従業員が一番先に考えることは、その後の生活のことのはずです。

そのため、会社側には相応の配慮が求められます。失業給付は「会社都合」のためにすぐ受給できるということを説明したり、退職金の上乗せも考慮する必要があるでしょう。

また、退職勧奨を受ける従業員の立場を考えて、礼儀をもって話し合うことが大切です。退職勧奨は法律的な制限がない分、それに応じるか応じないかは最終的に本人の判断です。

そのため、何よりも重要な事はメリット・デメリットといったことではなく、会社の考えを丁寧に説明し、理解をしてもらうことではないでしょうか。(そこを怠ったために、トラブルに至るケースは本当に多いのです・・・!)

 

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濵中 伸介(はまなかしんすけ)のイメージ

執筆者

社会保険労務士法人アールワン 濵中 伸介(はまなかしんすけ)
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